「スケールの大きな話だ」や、「スケールの小さい人だ」など、「スケール」という言葉は、日常生活でもよく耳にします。
スケールはラテン語でScalaに由来し、もとは階段や梯子という意味でした。日本では、規模や度合いのほか、地図の縮尺、測量道具、基準など、いくつかの意味で使われます。
スケールをテーマにした本展は、歴史的な作品・資料を通じて物の大きさと見え方を考察するとともに、写真家やミニチュア作家など8組の現代アーティストの作品も紹介。美術館で「スケール」に真っ向から挑む、ちょっと変わった試みです。
国友一貫斎は、江戸時代の鉄砲鍛冶師です。戦国時代から続く国友鉄砲鍛冶の家に生まれ、その技術を利用して《反射望遠鏡 銘一貫斎眠龍能当(花押)》を作り、日本で初めて天体観測を行いました。
一貫斎の望遠鏡は、最初は舶来品の模倣でしたが、最終的にはオランダ製の2倍の倍率を持つまでに。太陽や月の観測も行っています。
8組のアーティストは、特に気になった作家を中心にご紹介します。
地元・横須賀の作家、平町公さんの《京浜工業地帯の掟磯子・横須賀隆起図》は、416×3086cmと、会場の壁を覆う巨大な作品。本展に向けて作製された新作です。まるで空から旅をしているような臨場感を味わうことができます。
ミニチュア用の人形と、事務用品や食品サンプルなどを組み合わせて、見立ての世界を作り出す、ミニチュア写真家の田中達也さん。女性用の髪留めや櫛などを恐竜に見立てた《カミドメドンの発掘現場》など、ユニークな作品が紹介されています。
田中さんは、作品においてスケールは注意深く利用され、基準となる人形の大きさを使い分けられています。各作品、人形の大きさにも注目してみてください。
高田安規子さん・政子さんは、「ガリヴァー旅行記」にちなんだ展示構成。作品をよく見ると、弓矢は爪楊枝、バケツは指ぬきなど。「ガリヴァー旅行記」の小人たちにとっては、爪楊枝などは武器だったかもと、物の見え方を再考するきっかけを紹介します。
ちなみに「ガリヴァー旅行記」で、唯一実在する国として描かれている日本の「ザモスキ(Xamoschi)」という地名は、横須賀美術館の所在地・観音崎では? という説もあります。
スケールについて、改めて考えさせられる本展。美術館の出入り口から、横須賀の広い海が見えます。取材後に大きな海を身ながら、人間って小さいな、と思いながら館を後にしました。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年4月18日 ]