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    レポート
    企画展「大♡地図展」
    東洋文庫ミュージアム | 東京都
    We LOVE 古地図♡
    古今東西の地図史料を収蔵する東洋文庫ミュージアム。2015年には、17世紀・オランダで制作された『大地図帳』を中心に展示した「大地図帳展」が開催されました。「大♡地図展」は、地図特集展示の第二弾。日本の古地図に焦点を当て、地図の魅力を伝える展覧会が開催中です。
    (左から)石川流宣《大日本国正統図》 / 長久保赤水《改正日本輿地路程全図》
    《行基図(『捨芥抄』収録)》
    《大日本沿海輿地全図(伊能図・カナ書き特別小図)》
    (左から)《北蝦夷余誌》 / 葛飾北斎《総房海陸勝景奇覧》
    村上島之允《陸奥州駅路図》
    秋山永年《富士見十三州輿地全図》
    《高野山細見大絵図》
    《江戸買物独案内》
    日本大学理工学部学芸員課程作《江戸北部の立体模型》
    日本地図を作った伊能忠敬は今年、没後200年を迎えます。地図製作の精度が飛躍的に発展した江戸時代。伊能図が完成するまで、長らく日本地図の基本形とされた《行基図》が、展覧会の最初に登場します。

    《行基図》は、山城国(平安京)を中心にして、楕円形に諸国が連なっているのが特徴。不格好ですが、日本のかたちを、大まかに知ることができます。地理学的には不正確ながら、国内外で地図上に日本を描く際、長く参考にされていました。

    作成者とされる行基は、8世紀の僧侶。残念ながら当時の地図は現存しません。複数種類ある《行基図》のうち、今回の展示では鎌倉時代の百科事典『捨芥抄』に収録されていたものを見ることができます。


    企画展「大♡地図展」第1会場

    地図としての正しさよりも、膨大な情報量と美しさで勝負した、石川流宣の《大日本国正統図》。「流宣図」とも総称される日本地図の一つです。地図好きには垂涎の資料を、至近距離で見ることができます。

    地図としての機能のほか、諸国藩主の石高や、主要な街道、宿場や名所などの情報が細かく書き込まれています。旅行文化が花開いた江戸時代。庶民たちの興味対象は、列島の正確な形より、観光資源の方だったのでしょうか。

    本展の目玉は、石川流宣《大日本国正統図》と、長久保赤水《改正日本輿地路程全図》が隣同士に並ぶこと。地図の変遷を間近で確認できるチャンスを、お見逃しなく。

    今年は、歌川広重も没後160年を迎えました。広重は江戸から離れることなく、先行の名所図会などを資料にし、《六十余州名所図会》などの名所絵を作成しました。

    東洋文庫が所蔵する浮世絵資料は、極めて保存状態が良好。摺った当初の木目の跡まで確認できるものもあります。


    企画展「大♡地図展」第2会場

    デジタルコンテンツも豊富です。展示室中央に用意されたモニターでは、貴重な古地図の高精細画像を活用し、実物では見づらい注目ポイントを分かりやすく紹介。細かく書かれた山の名前も目を細めずに読むことができます。

    『江戸大絵図』(18世紀初頭/東洋文庫蔵)を、現在の江戸北部の立体模型に映し出した作品は、日本大学理工学部学芸員課程の学生の皆さんが作成。夏休みのすべてを、この模型に費やしました。

    平面の地図を立体にすることで、広大な敷地を有していた大名屋敷が、現在では沢山の区画に分かれていることなどが、視覚的に確認することができます。

    本展のタイトル「大♡地図展」の正式な読みは「だい♡ちずてん」。学芸員たちは「だい〈すき〉ちずてん」と、「♡」を「すき」と読んでいます。地図へのラブが詰まった展覧会。これを見たら、何気なく見ていた地図がきっと大好きになってしまいます。

    [ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年9月27日 ]

    図説 世界古地図コレクション図説 世界古地図コレクション

    三好 唯義(編集)

    河出書房新社
    ¥ 1,944

     
    会場
    会期
    2018年9月15日(土)~2019年1月14日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    火曜日(火曜日が祝日の場合は翌平日)
    住所
    東京都文京区本駒込2-28-21
    電話 03-3942-0280
    公式サイト http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/
    料金
    一般 900円 / 65歳以上 800円 / 大学生 700円 / 中・高校生 600円 / 小学生 290円
    展覧会詳細 企画展「大♡地図展」 詳細情報
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