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    レポート
    メスキータ
    東京ステーションギャラリー | 東京都
    エッシャーの師、日本初の大回顧展
    19世紀から20世紀にかけて活躍したオランダのアーティスト、サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868-1944)。エッシャーに大きな影響を与えましたが、その最期は悲劇的でした。日本で初めての回顧展が東京ステーションギャラリーで開催中です。
    (左から)《マントを着たヤープ》 1913 / 《ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像》 1922
    (左から)《髭に手をやる自画像》 1917 / 《パイプをくわえた自画像》 1900
    (左から)《ドーラ》 1895頃 / 《ベッティ・ロペス・デ・レアオ・ラグーナの肖像》 1908
    (左から)《喜び(裸婦)》 1914 / 《悲しみ(裸婦)》 1914
    (左端から時計回りで)《ユリ》第1ステート(全5ステートのうち) / 《ユリ》第2ステート(全5ステートのうち) / 《ユリ》第4ステート(全5ステートのうち) / 《ユリ》第3ステート(全5ステートのうち) すべて 1916-17
    (左から)《鹿》第10ステート(全10ステートのうち) / 《鹿》第9ステート(全10ステートのうち) ともに 1925
    (左から)《ファンタジー:キッパーの男》 1905頃 / 《ファンタジー:紙片を持つ女(ルネに)》 1925
    (左から)《ファンタジー:さまざまな人々(黒い背景)》 1921 / 《ファンタジー:三人の人物(青い顔)》 1922
    (左奥から)《『ウェンディンゲン』第10巻10号 [特集:ロシア演劇]》 1930 / 《『ウェンディンゲン』第1巻10号 [特集:建築]》 1918

    「M.C.エッシャーの師」という取り上げられ方が多いメスキータ。エッシャーの関連作品としての展示はありますが、今回は正真正銘、メスキータを主役に据えた大規模展です。


    メスキータはアムステルダム生まれ。国立美術アカデミーを受験するも不合格となり、結局、国立師範学校で美術教育の資格を取りました。


    初期は油彩や水彩を描きましたが、1890年頃からエッチングやリトグラフ、木版画などの版画も手掛けるように。とりわけ得意にした木版画が、後にエッシャーに影響を与える事となります。


    展覧会のメインビジュアル《ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像》は、息子を描いた作品。他に自画像も数多く並びます。メスキータは生涯を通じて自画像を手掛けています。


    1902年にハールレムの応用美術学校の教師になったメスキータ。エッシャーはここでメスキータの教えを受けました。特にエッシャーの初期作品には、メスキータの影響が強く見て取れます。



    本展の特徴のひとつが、ステート違いの作品を展示している事。版画の制作では、工程の段階ごとに試刷りをしていくため、最初の試刷りが第1ステート。以後、最終ステートまで番号が増えていきます。ステートを追う事で、創作のプロセスが楽しめます。


    例えば《ユリ》は、第5ステートまで進みました。ベタの背景に線が加わり、人物も増えるなど、大きく変化している事が分かります。


    メスキータは木版画制作の中で、しばしば対象を幾何学的に構成する事があります。《鹿》は顕著な例で、角は三角形に。鹿のフォルムもデザイン性が高くなっています。


    版画は綿密に計算しながら制作を進めるメスキータですが、ドローイングは真逆です。本人いわく「まったく意図していない無意識の表れ」で、現実と空想が入り混じったような作品を数多く描いています。


    会場には、メスキータが表紙のデザインを担当した建築と美術の雑誌『ウェンディンゲン』も並びます。表紙は1920年代のさまざまなスタイルの作家がデザインを手掛け、メスキータは計9回担当。うち2回は、メスキータ自身の特集でした。


    高齢になっても精力的に活動を続けたメスキータですが、その晩年は暗黒の時代と重なってしまいます。1940年、ドイツはオランダを占領。ユダヤ人であるメスキータは1944年に逮捕され、アウシュビッツで75歳の生涯を閉じました。


    師の悲報を嘆いたエッシャーは、いちはやくメスキータの作品を保護。終戦後すぐにメスキータの展覧会も開催しています。今日までメスキータ作品が残っているのは、エッシャーの尽力があったからこそです。


    東京ステーションギャラリーから始まった巡回展。東京展の後は千葉、兵庫、栃木、福島と進みます。会場と会期はこちらです


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年6月28日 ]



    会場
    会期
    2019年6月29日(土)~8月18日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※金曜日は20:00まで
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)
    住所
    東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前
    電話 03-3212-2485
    公式サイト http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
    料金
    一般 1,100(900)円 / 高校・大学生 900(700)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は前売料金(4/27~6/28販売)
    ※20名以上の団体は、一般 800円、高校・大学生 600円
    ※障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)
    ※前売券販売場所は、ローソンチケット(Lコード=33345)、イープラス、CNプレイガイド、セブンチケットにて販売(6/28まで)。美術館受付での販売は6/16までの開館日(閉館30分前まで)に限ります。
    展覧会詳細 メスキータ 詳細情報
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