IM
    レポート
    華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展
    東京富士美術館 | 東京都
    会員の証、"ディプロマ・ワーク"がずらり
    英国の芸術機関、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ。1768年に国王ジョージ3世の庇護のもとに設立され、現在でも国際的アーティストが会員に名を連ねる「英国美術の殿堂」から、歴代会員の優品など96点が来日しました。
    ジョン・エヴァレット・ミレイ《ベラスケスの想い出》
    第1章「設立:名声への道 1768-1837」
    (左から)ジョシュア・レノルズ《セオリー》 / ヘンリー・レイバーン《少年とうさぎ》
    ジョシュア・レノルズ《セオリー》(部分)
    第3章「名声と繁栄 1867-1895」
    ジョン・エヴァレット・ミレイ《ベラスケスの想い出》(部分)
    《ベラスケスの想い出》の額の下部には「DIPLOMA WORK」の銘板が
    (右から)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》 / ジョージ・ヴィカット・コウル《秋の朝》
    ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》(部分)
    英国の芸術振興を進め、芸術家の専門教育のために設立されたロイヤル・アカデミー。しばしば「王立芸術院」と訳されますが、英国王家や政府から財政的な支援を受けているわけではなく、年次展覧会の入場券や図録の販売などで運営しています。

    ロイヤル・アカデミーの会員になるためには、まず会員の推挙を受けて、自身の渾身の力作をロイヤル・アカデミーに委託。提出された作品は「ディプロマ・ワーク」と呼ばれ、評議会で承認されると、会員として氏名の後ろに「RA」の頭文字を付ける資格が与えられます。

    本展は創立当時から20世紀初頭まで、約150年間のロイヤル・アカデミーの作品を紹介する企画。創設者であるジョージ3世の胸像から始まり、奥に進むとアカデミーの初代会長であるジョシュア・レノルズによる《セオリー》が登場します。ロイヤル・アカデミーのライブラリーの天上画として描いた女性像で、ルネサンス様式の巫女。「セオリーは真の本質についての知識である」と記した巻物を手に持っています。


    ジョシュア・レノルズ《セオリー》

    ジョン・エヴァレット・ミレイは、史上最年少の11歳でロイヤル・アカデミー・スクールに入学。「チャイルド」というあだ名をつけられました。後にアカデミーの教育方針に反発してラファエル前派を結成したミレイですが、最晩年には会長にも就任しています(ただ、就任の半年後に死去しました)。

    《ベラスケスの思い出》は、スペイン王女マリア・マルガリータを描いたディエゴ・ベラスケスの《女官たち(ラス・メニーナス) 》から着想した作品。衣服は荒い筆使いで、対照的に表情は繊細なタッチで描かれています。この作品は1868年に寄託されたディプロマ・ワークで、額の下部には「DIPLOMA WORK」の銘板があります。


    ジョン・エヴァレット・ミレイ《ベラスケスの思い出》

    ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスは、1871年にロイヤル・アカデミー・スクールに入学。銘板こそありませんが、《人魚》もディプロマ作品です。髪をすく美しい人魚は、人を誘惑する妖しい表情です。

    ウォーターハウスがアカデミーの会員になった1901年は、ちょうど夏目漱石が英国に留学していた時期でした。漱石はウォーターハウスがお気に入りで、長編小説「三四郎」にウォーターハウスを意識したと思われる人魚が出てきます。


    ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》

    ラファエル前派展ターナー展など、英国絵画の展覧会は近年も数多く開かれていますが、特定の流派や人物に特化する場合が多く、英国美術をトータルで紹介するのは貴重な機会です。東京富士美術館では常設展示室でもロイヤル・アカデミー関連の作品を紹介していますので、あわせてお楽しみください。

    なお本展は全国巡回展。東京展の後は静岡展(2014年12月6日~2015年1月25日:静岡市美術館)、愛知展(2015年2月3日~4月5日:愛知県美術館)が開催されます。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年9月16日 ]

    TOKYO美術館 2014-2015

     

    エイ出版社
    ¥ 1,026

    料金一般当日:1,400円
     → オトクなチケットはこちらからicon

     
    会場
    会期
    2014年9月17日(水)~11月24日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(受付は30分前まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし祝日の場合は開館し、翌火曜日休館
    住所
    東京都八王子市谷野町492-1
    電話 042-691-4511
    公式サイト http://www.fujibi.or.jp/
    料金
    大人1300(1000)円、大高生800(700)円、中小生400(300)円
    ※新館常設展示室もご覧になれます
    ※土曜日は中小生無料
    ※( )内は前売券、各種割引料金[20名以上の団体・65歳以上の方・当館メルマガ登録者ほか]
    ※障がい者及び付添者1名は半額[証明書等をご提示下さい]
    ※誕生日当日にご来館された方はご本人のみ無料
    展覧会詳細 「華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展 ─ターナーからラファエル前派まで─」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    地域おこし協力隊(文化財調査・活用促進員)募集します! [小坂町郷土館博物館]
    秋田県
    ポーラ美術館 学芸員及びエデュケーター募集 [ポーラ美術館]
    神奈川県
    肥後の里山ギャラリーの企画・運営担当者(学芸員) [肥後銀行本店 肥後の里山ギャラリー]
    熊本県
    奈良国立博物館アソシエイトフェロー(文化財情報)1名の募集について [奈良国立博物館]
    奈良県
    ムーゼの森 学芸員募集 [エルツおもちゃ博物館・軽井沢、軽井沢絵本の森美術館]
    長野県
    展覧会ランキング
    1
    東京都美術館 | 東京都
    ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
    開催中[あと65日]
    2025年9月12日(金)〜12月21日(日)
    2
    上野の森美術館 | 東京都
    「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」
    開催中[あと23日]
    2025年9月20日(土)〜11月9日(日)
    3
    出羽桜美術館 | 山形県
    没後40年 有元利夫 優美な絵画世界への誘い
    開催中[あと51日]
    2025年9月5日(金)〜12月7日(日)
    4
    東京国立博物館 | 東京都
    特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
    開催中[あと44日]
    2025年9月9日(火)〜11月30日(日)
    5
    国立西洋美術館 | 東京都
    オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語
    開催まであと8日
    2025年10月25日(土)〜2026年2月15日(日)