私たちの生活を一変させた、新型コロナウイルス。クルーズ船での感染が話題になってから1年以上、いまだにこのような状況に陥っているとは、当初は誰も思わなかったのではないでしょうか。
コロナ禍で活動の変化を余儀なくされた、世界194組のアーティストたち。それぞれが投稿した約 2 分間の動画を一堂に展観する展覧会が、市原湖畔美術館で開催中です。
市原湖畔美術館「Artists’ Breath―コロナ禍の中、アーティストはいま」会場入口
文字通り国境を超えて駆け抜けている、新型コロナウイルスのパンデミック。程度の差こそあれ、世界中の人がこの病気に翻弄されており、77億人が共通の体験をする、稀有な出来事であるともいえるでしょう。
展覧会は、2020年6月15日にスタートしたインスタグラムのプロジェクト「ArtistsʼBreath」に投稿された、アーティストたちからの映像を紹介するもの。
参加しているのは、北川フラムが総合ディレクターをつとめる5つの地域芸術祭(房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス、北アルプス国際芸術祭、奥能登国際芸術祭、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭)に出展するアーティストたちです。

市原湖畔美術館「Artists’ Breath―コロナ禍の中、アーティストはいま」会場風景
コロナの影響で、多くの芸術祭や展覧会が延期や中止になっています。先に紹介した5つの芸術祭も、いちはらアート×ミックス、北アルプス国際芸術祭、奥能登国際芸術祭の3つは昨年開催の予定でしたが、それぞれ延期になりました。
インスタグラム・プロジェクトは、この状況でアーティストが何を考えているのか、その生の息吹を伝えようと毎日更新。会場では映像が次々に入れ替わり、著名なアーティストからのメッセージも数多く登場します。

浅葉克己

佐藤卓

原研哉
全体の映像インスタレーションを手掛けたのは、ニブロールの舞台などで知られる高橋啓祐です。
「生命の海でつながるアーティストたちの息吹」として、アーティストによる映像をつなぐように、世界地図をモチーフにしたインスタレーションがゆっくりと動いていく構成。
市原湖畔美術館の特徴的な吹き抜けに映像が流れるさまは、とても印象的です。

市原湖畔美術館「Artists’ Breath―コロナ禍の中、アーティストはいま」会場風景
コロナ禍でさまざまな活動に制限がかかる中でも、確実に季節は変わっていきます。
展示室2では、1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けた「二十四節気」に焦点を当てた展示も行われています。

二十四節気の展示
ここでは「Artists’ Breath」で使われた、全国各地の節気の祭りや行事にインスピレーションを得て制作された仮面や衣装を一堂に展示。季節の変化を暮らしのアクセントとし、自分たちも自然の一部として生きてきた日本人の生活文化を見つめ直します。
ディレクターの北川フラム自身が仮面や衣装を身に着けて、日本各地に残る二十四節気にまつわる行事や習わしを説明していきます。

仮面や衣装を身に着けて解説するのは、ディレクターの北川フラム
上映されている映像作品はインスタで公開されていますが、一堂に大画面で見る事でアーティストの息吹を感じる事ができます。
これらのアーティストの作品を、芸術祭で見られる日を心待ちにしたいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年5月3日 ]