京都駅から徒歩約12分、堀川通りに面したところに「龍谷ミュージアム」はあります。真向かいにはこの春、宗祖・親鸞聖人の生誕850年、立教開宗800年の節目の慶讃法要が営まれる浄土真宗本願寺派の本山・西本願寺があり、全国からの参拝者を迎えています。龍谷ミュージアムでは記念の春季特別展として『真宗と聖徳太子』が始まりました。
龍谷ミュージアム外観
全国からの参拝者が集う西本願寺
この展覧会では、真宗宗祖の親鸞と聖徳太子の関係にスポットをあて、門徒たちへ継承される太子信仰の謎に迫ろうとするものです。
比叡山で修行を積んでいた親鸞は、六角堂での太子の夢のお告げにより、山を降りて法然の弟子となりました。専修念仏を説く浄土真宗の教えは、今も多くの人々の心を支えることとなっています。親鸞は太子を「和国の教主」として篤く崇敬したのです。
展示風景
浄土真宗の寺院では、堂内に聖徳太子の絵を飾ったり、太子の生涯を伝える「絵伝」や「伝絵」が作られました。太子に続き法然や親鸞など高僧や先徳が連坐する掛軸など、太子との繋がりを前面にした布教も盛んであったと感じられます。
「聖徳太子童形像」は地方寺院にも多く、親鸞直筆による「皇太子聖徳奉讃断簡」など太子和讃の讃歌も見ることができます。親鸞は書簡でやりとりしながら遠方寺院とも教えを説いたといわれているので、筆使いなどにも注目です。
展示風景
展示風景
いくつかの種類の聖徳太子像もありました。2歳のお姿は東方を向いて「南無仏」と合掌する福井の毫攝寺蔵の木彫仏。少し膨らんだ長袴や頭部が大きい幼子の体形をよく示している像です。
凛々しい立ち姿の像は、木造 聖徳太子孝養立像で石川県の松岡寺所蔵の重要文化財。柄香炉を胸前で持ち角髪を結う、用明天皇の病平癒を願う太子16歳の姿で、袈裟や衣の模様も艶やかに残る威厳ある像です。当時の太子のイメージとして全国に流布したようです。
展示風景
また、布教活動には絵伝が用いられました。絵と詞による絵巻になった(伝絵・でんね)と掛軸になった絵伝(えでん)が多く出品されています。法然や親鸞の絵伝とともに、仏教興隆を象徴する聖徳太子絵伝も盛んに制作されていたようです。これらを掛けて、生涯の出来事などの絵解きしながら業績を伝えられれば、誰にでもわかりやすかったことでしょう。
六角堂での説話や、太子の誕生や結婚の場面も人気があったようで、様々な絵伝に描かれています。展示では対比して読み解けるよう、注釈のついたパネルもあります。
絵伝 展示風景
今回の展覧会では文化財デジタル解析などとの連携もみられます。細部や内部の解析や、高精密複製をつくることによる新たな発見や利用の多元化など、今後の成果が期待できます。
大阪杭全神社所蔵の聖徳太子絵伝がデジタル複製で展示
今後の研究にはかかせないデジタルコンテンツ
龍谷ミュージアムは多方面から仏教文化を紹介する展示を楽しめますが、大きな特徴として、失われた中国トルファンの「ベゼクリク石窟」大回廊を原寸大で復元展示していることがあります。圧倒されるような空間の再現を、一度体験してみてください。
ベゼクリク石窟復元展示
周辺には西本願寺・東本願寺、仏具店の並ぶ門前、そして一風変わった伊東忠太設計の赤レンガの本願寺伝道院もあります。ちょっと不思議な街並みに京都の歴史を感じられるエリアです。私は七条通りを5分ほど更に西へ歩き、笹谷伊織のお抹茶タイムと共に満開の桜の京都を楽しみました。
笹谷伊織本店でのひととき
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2023年3月31日 ]
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