悟りを開く前が菩薩、開いた後が如来。知恵が満ちているため頭が盛り上がり(肉髻:にっけい)、髪はパンチパーマ風(螺髪:らはつ)、衣は質素で装飾は無し(ただし大日如来は冠を被っています)が、如来の基本形です。
展示作品は28件。やや少なく感じられるかもしれませんが、全19幅の《釈迦三尊十六羅漢像》もあり、ボリューム感は申し分ありません。
まず最初は、釈迦の生涯を描いた重要文化財《絵過去現在因果経》。絵因果経の歴史は古く、今回の作品は鎌倉時代の作ですが、絵は奈良時代から伝わる古風な様式で描かれています。
重要文化財《絵過去現在因果経》良盛筆 住吉慶忍・聖衆丸画 根津美術館悟りを開いた釈迦は80歳で亡くなりましたが、その模様を描いたのが《仏涅槃図》です。周囲に悲しむ弟子や動物たちがいて、象は裏返しになって嘆いています。雲の上からは、すでに亡くなった釈迦の母・摩耶夫人も駆けつけています。
人間としての釈迦は亡くなっても、釈迦如来は存在の永遠です。獅子に乗る文殊菩薩と、白い象に乗る普賢菩薩を従えた《釈迦三尊像》は、釈迦如来の表現では定番のスタイルです。
《仏涅槃図》と《釈迦三尊像》展覧会のメインビジュアルは《兜率天曼荼羅》。56億7千万年後にこの世に現れて如来になる弥勒菩薩が、その機会がくるのを兜率天(とそつてん)で待っている場面です。
全体が爽やかな緑色。斜め上から描いた構図も特徴的で、弥勒菩薩が絵の中心から外れているのは仏画としては極めて珍しく、兜率天を描いた作品としては大阪・延命寺本と本作の2例しか確認されていません。
やや痛みが見られるため、斜めの台に載せて展示されていますが、おかげで作品の下部はケース前方に近寄っています。細部までお楽しみください。
《兜率天曼荼羅》根津美術館展示室2では常盤山文庫が所蔵する《釈迦三尊十六羅漢像》を展示。十六羅漢+釈迦三尊の19幅が揃っている、貴重な作例です。
神通力を操る、16人の羅漢たち。人を超えた存在ですが、その所作にはユーモラスな一面も見受けられます。
重要美術品《釈迦三尊十六羅漢像》常盤山文庫同時開催のテーマ展は、展示室5で明治天皇の第六皇女、常宮昌子内親王ゆかりの雛人形と雛道具を展示する「旧竹田宮家のおひなさま」。展示室6ではいつものように季節にちなんだ茶道具の取り合わせを紹介、今回は「春情の茶の湯」です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月26日 ] |  | 仏画入門
山田 美和 (著), 堀内 伸二 (解説) 春秋社 ¥ 2,000 |