コロナによるステイホーム期間に、新しいことを始めた方も多いのではないでしょうか。茶道には無縁で生きてきた私が1日1回抹茶を点て始めた時は、自分のことながら驚きました。
中之島香雪美術館で開催中の「茶の湯の器と書画」。
タイトル通り、茶入、茶碗、水指、香合、菓子器などの茶道具、そして茶席の床の間に掛けられた書画、そして浮世絵の肉筆画など約80点が紹介されています。
これらは朝日新聞社の創業者である村山龍平が収集した優品です。

展示風景

野々村仁清 《白釉鉄釉流耳付水指》江戸時代前期 17世紀 陶器 村山コレクション
茶入が形によって分類されていることや、それぞれの茶碗の銘の由来や特徴などの丁寧な解説に沿って、作品をじっくりと鑑賞できます。
作品1つ1つにも魅了されますが、村山龍平が実際に、季節や迎える客のことを思いながら道具を選び、気持ちの良いひと時を過ごしたのだと思うと、それだけでこちらも贅沢な気持ちになります。

樂道入 《黒楽茶碗 銘 寒空》江戸時代前期 17世紀 陶器 村山コレクション
特に気に入った黒楽茶碗を見ていると、自分の手の中に包込むように持った感触や、抹茶の濃い緑色と器の黒色の対比など、想像するだけで至福です。
よく「茶碗の中には宇宙がある」と表現されますが、茶道具それぞれ独自の空気感を放っています。
道具がもつ魅力とそれを愛しんだ人の気持ち、そして今に至るまでの時間などが層となり、そう感じさせてくれるのかもしれません。

勝川春章《三都美人図》江戸時代中期 18世紀 絹本着色 村山コレクション
また前期展示のみどころの1つは、勝川春章の《三都美人図》です。
日本で最も古い美術専門紙「國華」で1913年に紹介されて以来100年以上も表に出ていなかった肉筆画です。
御簾から透けて見える部屋の中、細かく描かれた着物の柄など、ため息がでる繊細さが魅力です。
左側の着物を胸にあてる女性は、大坂の豪商の奥方だそうです。
壁に掛かった箱、何か判りますか。
そう、掛け時計なんです。
それがあることで、この作品がとてもモダンにも感じます。

尾形乾山《銹絵染付松文向付》江戸時代中期 18世紀 陶器 香雪美術館
単に茶を点てて飲むだけでなく少し踏み込むことで、総合芸術としての茶の湯の世界が広がることがわかります。
外側から見るだけでなく、芸術の中に身を置くことができると再認識できたことは、コロナ禍の影響で美術館に行けない日々を寂しく感じていた私に、ポンと何か投げられた気がしました。
エエリアレポーターのご紹介 | カワタユカリ 美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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