60年前の戦後まもない昭和24年5月、青森県三戸町に住む一人の青年が満開の桜とりんごの花に見送られながら漫画家を志して上京しました。彼の名は、馬場のぼる。子どもたちの何気ない日常をテーマに、ユーモアあふれる描写で明るくのびやかな世界を表現した馬場の作品は瞬く間に人気となり、「ポストくん」「ブウタン」などの人気の作品を次々と生み出しました。その後、活躍の場を大人向け週刊誌や新聞に広げた馬場は、「ろくさん天国」「バクさん」などに代表される独特のユーモアとナンセンスに彩られた<ほのぼの漫画>を数多く手掛けます。そうしたなか、絵本という新しいジャンルが馬場の前に開かれます。当時、時代が求めていた馬場は、この新しいジャンルに飛び込み、漫画で表現していた世界観をそのまま絵本の世界に導入していきました。とくに、昭和42年に第一作が発表されて以来、約30年かけて6冊を手がけた『11ぴきのねこ』シリーズは、テンポの良いストーリー展開と奇想天外な結末によって多くの子どもたちを魅了し、現在では、日本の代表的ロングセラー絵本になっています。
表現のジャンルを軽やかに横断しながら独自の世界観を生涯追求し続けた漫画家、馬場のぼる。その作品世界を『11ぴきのねこ』シリーズなどの絵本資料をはじめ、初公開となる活動初期の貴重な漫画原画やラフスケッチ、アイデアノートなどの資料をとおして紹介し、創作の秘密に迫ります。