日本カメラ博物館(館長 森山眞弓)では、2011年4月5日(火)から7月3日(日)まで、特別展「コシナとフォクトレンダー展」を開催します。
コシナ社は、1959年にレンズ加工工場の株式会社ニコーとして創業しました(1973年より現社名)。1968年からカメラ生産を開始し、レンズ加工から最終製品まで一貫生産を行うメーカーとして自社ブランドのカメラやレンズのほかOEM製品や8ミリシネカメラなどを製造してきました。
1999年に初めて“フォクトレンダー”の銘を冠した「フォクトレンダー ベッサL」を発売。描写や質感にこだわった製品を次々と送り出し、“フォクトレンダー・ブランド”を確固たる地位に築きあげました。また、2005年からはドイツの光学メーカー、カール・ツァイスと共同開発したフィルムカメラや交換レンズを発売するなど、デジタルの時代にあってもフィルムカメラを作り続ける個性ある光学メーカーとして独自の存在感を示しています。
フォクトレンダー社は、1756年にオーストリアのウィーンで創業した「世界最古の光学メーカー」といわれています。当初は精密機器や眼鏡、オペラグラスなどを製造していましたが、1840年に数学者のペッツバール設計による数学的計算に基づいた世界初の写真用レンズの製造に成功。翌1841年、このレンズを使用した「フォクトレンダー・ダゲレオタイプカメラ」を発売し、カメラ事業をスタートします。その後ドイツへと拠点を移し、主にレンズなどを製造していましたが、20世紀に入りカメラの製造を再開し、独創的なカメラを次々と送り出します。
三眼レフステレオカメラの「ステレフレクトスコープ」(1914年頃)をはじめ、カメラ上部から煙突のように突き出た長いプランジャーを押してフィルム巻上げとシャッターチャージを行う「ビテッサ」(1950年)、交換レンズに一眼レフスチルカメラ用としては世界初のズームレンズ「ズーマー」を用意した「ベッサマチック」(1959年)、世界で初めてエレクトロニック・フラッシュをボディ内に組み込んだ「ビトローナ」(1964年)など、独自の機構を追求した個性的なカメラは、現在でも多くのユーザーに支持されています。
1969年にツァイス・イコン社に吸収され、後に消費者向けカメラ事業から撤退したことにより、フォクトレンダーは終焉を迎えますが、光学産業のパイオニアとしてその名は歴史に深く刻み込まれています。
今回の特別展では、「フォクトレンダー」などの銘を冠し、デジタル時代にあっても伝統あるメーカーの哲学を受け継ぎ個性ある製品を作り続けているコシナ社と、世界最古の光学メーカーといわれるフォクトレンダー社の製品をそれぞれ展示し、オリジナリティあふれるカメラやレンズを送り出してきた両社の歴史を紹介いたします。