奈良出身の芸術家、そして近代陶芸の巨匠として知られる富本憲吉(1886~1963)。1913(大正2)年、富本は親友バーナード・リーチとの交流の中から楽焼に取り組み始め、やがて本格的に陶芸の道に進みます。以降約50年にわたる陶業を通して創造性ゆたかな作品を探求し、日本の陶芸の近代化に大きな役割を果たしました。独自の表現を模索するにあたり、富本は陶磁器における「模様」とはどうあるべきかという問題に大きな関心を寄せます。古陶磁の魅力を深く理解する一方、それらを安易に模倣することを戒めた彼は、「模様より模様を造るべからず」という信条を掲げます。既成の模様から離れ、身近な自然を観察し、何度も写生して新しい模様へと昇華させる・・・それは大変な労力を要する営みでした。しかしそうして創作された数々の模様は、時間を経ても色あせることなく、今もなお見る者の目を楽しませてくれるのです。本展ではその「模様」に着目し、館蔵品・寄託品に他館所蔵品を加えた約120件を展示します。模様にまつわるエピソードもあわせて紹介し、その創作の道程をたどります。豊富なモチーフ、技法による印象の違いなど、富本ならではの模様の世界をお楽しみ下さい。