インターネットミュージアム
美術館・博物館・イベント・展覧会 インターネットミュージアム
  インターネットミュージアム  >  取材レポート  >  インポッシブル・アーキテクチャー

インポッシブル・アーキテクチャー

■「建築可能であったプロジェクト」も
【会期終了】 都市の成長にあわせて、次々に建てられる建築物。オープンした施設に注目が集まる一方で、実現には至らなかった建築の中にも、新しい発想や斬新なアイデアが含まれている例は数多くあります。20世紀以降の「未完の建築」のみを集めた展覧会が、埼玉県立近代美術館で開催中です。
「実現不可能な使命」を描いた映画が「ミッション:インポッシブル」なので、インポッシブル(Impossible)の意味は「不可能」。ただ本展に並ぶ建築は、無理難題のために完成しなかったわけではありません。

実現しなかった要因は、法律や技術の問題、コストや工期の問題、コンペでの落選案、または政治的・社会的な問題など。逆に言うと、それらの諸条件さえ満たされれば、いつでも「ポッシブル=可能」になる建築でもあります。

まずは会場入口前のCG映像《見えない都市#パート1#メタボリズム》から。映像作家のピエール=ジャン・ジル―による、日本の建築運動・メタボリズムへのオマージュ作品です。現在の東京の姿に、当時の計画を3DCGで入れた動画ですが、驚くべきリアルさ。黒川紀章による二重螺旋構造が電車の車窓から見えるさまはゾクゾクします。



会場に入ると、ほぼ年代順の構成です。ウラジーミル・タトリンの「第3インターナショナル記念塔」は、ロシア・アヴァンギャルドを象徴する作品。ロシア革命政府のモニュメントで、高さは世界で最も高かったエッフェル塔を凌ぐ400メートル。下から立法府、行政府、情報局が入り、それぞれ1年、1カ月、1日に1回転します。当時のソ連では経済的にも技術的にも建設は困難でしたが、広く世界に知られました。

関東大震災で大破した東京帝室博物館(現東京国立博物館)の再建案を募るコンペに、落選覚悟で果敢に挑んだ若い建築家が前川國男です。コンペはあらかじめ平面プランが用意され、「日本趣味ヲ基調トスル」という建築様式も指定されていましたが、前川は諸条件を無視。上野公園まで含んだ大胆な平面プランと、シンプルな外観デザインを示しました。図面は戦災で焼失し、雑誌に載った図版しか残されていませんでしたが、今回、配置図と模型が作成されました。

磯崎新の「東京都新都庁舎計画」も、確信犯的な計画。コンペの要項を読み解くと、事実上「超高層2棟」しかあり得ない中で、意図的に低層のプランを提示しました。縦割り行政から横へのネットワークを促すとともに、権威としての塔を否定しています。

展覧会の大きな目玉が、ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JVによる「新国立競技場」。コストのみがクローズアップされ、マスコミ主導のネガティブ・キャンペーンが行われたのは記憶に新しいでしょう。首相が世界に示してオリンピック招致を勝ち取ったはずのプランは、首相自身の「英断」によって白紙撤回されました。

会場にはCG映像や風洞実験模型のほか、目を引くのは参考出品として展示されている分厚い実施設計図書。「アンビルドの女王」どころか、構造性能評価書も取得し、後は大臣認定書を待って確認申請を行う段階でした。この作品のみ、あえて「建築可能であったプロジェクト」として紹介されています。

ユニークな手法で建築デザインを提案するのが、マーク・フォスター・ゲージ。有機的な外観は、さまざまなオンラインソースから無作為にオブジェクトをダウンロードし、3Dモデルにして組み合わせたものです。象徴性を持たせつつも、読み解く事ができないデザインです。

絵画や彫刻とは違い、建築は社会との接点が強いため、より社会からの影響を受けやすいものです。オリンピックに向けた開発が進む中で、公立の美術館でこの展覧会が開催されるのも、とても意義深いと思います。埼玉でスタート、新潟、広島、大阪と巡回します。会場と会期はこちらです

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年2月5日 ]

インポッシブル・アーキテクチャーインポッシブル・アーキテクチャー

埼玉県立近代美術館(編集),新潟市美術館(編集),広島市現代美術館(編集)

平凡社
¥ 2,916

 
会場埼玉県立近代美術館
開催期間2019年2月2日(土)~3月24日(日)
所在地 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
TEL : 048-824-0111
HP : http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=386
展覧会詳細へ インポッシブル・アーキテクチャー 詳細情報
取材レポート
国立科学博物館「特別展 「恐竜博 2019」
恐竜博 2019
国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
ウィーン・モダン
東京国立博物館「特別企画 奈良大和四寺のみほとけ」
奈良大和四寺
小田原文学館「「坂口安吾」ができるまで」
「坂口安吾」展
渋谷区立松濤美術館「華めく洋食器 大倉陶園100年の歴史と文化」
大倉陶園100年
千葉市美術館「没後60年 北大路魯山人 古典復興 ― 現代陶芸をひらく ―」
北大路魯山人
サントリー美術館「遊びの流儀 遊楽図の系譜」
遊びの流儀
東京都江戸東京博物館「発掘された日本列島2019」'
発掘された日本列島
国立新美術館「クリスチャン・ボルタンスキー ― Lifetime」
ボルタンスキー展
ちひろ美術館・東京「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」'
ショーン・タン展
日本科学未来館「企画展「マンモス展」 その「生命」は蘇るのか」'
マンモス展
ホキ美術館「スペインの現代写実絵画
スペインの現代写実
静嘉堂文庫美術館「書物にみる海外交流の歴史~本が開いた異国の扉~」
[エリアレポート]
書物にみる海外交流
細見美術館「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」
[エリアレポート]
タラブックスの挑戦
国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
[エリアレポート]
ウィーン・モダン
三井記念美術館「日本の素朴絵 ― ゆるい、かわいい、たのしい美術 ―」
[エリアレポート]
日本の素朴絵
国立西洋美術館「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」
[エリアレポート]
松方コレクション展
入江泰吉記念奈良市写真美術館「石内都 布の来歴 ― ひろしまから」
[エリアレポート]
「石内都」展
第3回 インターネットミュージアム検定
ミュージアグッズのオンラインショップ ミュコレ
2019年の展覧会予定(東京・名古屋・大阪 近郊)
皇室がご覧になった展覧会 博物館・美術館の情報
テレビでミュージアム 博物館・美術館の情報
エリアレポート(読者による取材記事) 博物館・美術館の情報
ニュース
一覧
東日本大震災・ミュージアム関連情報サイト MUSEUM ACTION
イベント検索ランキング
特別展 「恐竜博 2019」 特別展「三国志」 ハプスブルク展−600年にわたる帝国コレクションの歴史 国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展
唐三彩 ― シルクロードの至宝 ― 福島復興祈念展「興福寺と会津」 メスキータ展 マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン 展
博物館・美術館検索
ミュージアム干支コレクションアワード 干支コレクションアワード「猪」
グランプリは「ペッカリー(ヘソイノシシ)象形土偶」でした
ミュージアムキャラクターアワード2018 ミュージアムキャラクターアワード
2018、グランプリは
「雷切丸くん」でした
人気の展覧会 ブログパーツ アクセス数が多い展覧会を地域別にご紹介、ご自由にどうぞ。
刀剣乱舞(とうらぶ)に登場する刀たち 「刀剣乱舞-ONLINE-」に実装された刀、IM取材分をまとめました。
パートナーサイト 関連リンク集

             

博物館、美術館、展覧会の情報登録
博物館、美術館、展覧会に最適。広告のお問い合わせ
インターネットミュージアムへのお問い合わせ

Copyright(C)1996-2019 Internet Museum Office. All Rights Reserved.
ミュージアム・博物館・美術館の情報サイト[インターネットミュージアム]は、丹青グループが運営しています
協力/ (株)丹青研究所 、編集・制作/ (株)丹青社