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葛飾応為「吉原格子先之図」 ─ 光と影の美

■画狂老人の娘、知られざるその実力
【会期終了】 天才絵師・葛飾北斎の三女、葛飾応為(おうい)。美人画においては北斎をしのぐ力量があったといわれながら、現存する作品はわずかに10点程度しか確認されていない応為の代表作《吉原格子先之図》が、太田記念美術館で展示中です。
吉原遊郭の妓楼・和泉屋を舞台に、暗闇の中に浮かび上がる遊女と客を描いた肉筆浮世絵《吉原格子先之図》。大胆な陰影を用いた幻想的な光景は、一般的な浮世絵のイメージとは大きく異なります。

主役である中央の遊女は黒いシルエットで描かれていますが、手前に提灯があるので、本来は顔が見えるはず。他の陰影は正確なので、あえて影で表現していることが分かります。

室内の遊女は格子が邪魔をして、顔は見え隠れするのみ。はっきりと顔が見える右上の遊女は、鼻にもきちんと立体感が表現されています。

応為の作品には署名が無いものも多いのですが、こちらは署名がはっきりしています。提灯に絵師としての名前「應」「為」と、本名である「栄」が記されています。


葛飾応為《吉原格子先之図》

北斎の末娘だった応為。生まれは1801年頃、没したのは1866年頃と推定されますが、詳しいことは分かっていません。絵師の南沢等明(みなみざわとうめい)に嫁ぎますが、後に離縁。自分より拙い等明の絵を笑ったと伝えられるので、あるいはその男勝りの性格が離婚の理由かもしれません。

出戻った後には、父の北斎と同居します。北斎はズボラな一面がありゴミ屋敷に住んでいたと言われますが、応為も小さなことにこだわらない豪胆な性格。二人は気があったのか、北斎を「おーい」と呼んでいたのが、画号の「応為」になったという説もあります。対する北斎は、顎が出ていた応為のことを「アゴ」と呼んでいました。

女子力には疑問が残る応為ですが、絵師としての実力は、北斎が「余の美人画は、阿栄におよばざるなり」と語ったほど。同時代の美人画の名手、渓斎英泉(けいさいえいせん)も応為のずば抜けた力量を評価する言葉を残しています。

残念ながら、応為の遺作は数えるほどしか確認されていません。晩年の北斎を助けていたため、北斎80代の作品は応為の代筆が含まれているとも言われています。


応為の名前が記された数少ない版本のひとつ、高井蘭山著/葛飾応為画《女重宝記》。署名に「かつしか應為酔女筆」とあり、酒好きだったことが分かります(北斎は飲みませんでした)

光と影の表現が特徴的な《吉原格子先之図》にあわせ、会場では北斎一門による陰影表現や洋風表現の作品、また、江戸時代後期に活躍した国芳・広重・国貞、明治時代の小林清親なども紹介されています。さまざまな浮世絵師による光と影の捉え方をご覧ください。


会場風景

実は、2014年は葛飾応為のあたり年。東京展の展示は終わってしまいましたが「大浮世絵展」では《夜桜美人図》が展示され、名古屋・神戸・北九州・上野と巡回する「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」では《三曲合奏図》と、本展をあわせて応為の代表作が三点も見ることができるのです。

《吉原格子先之図》はあまり大きくない作品(26.3cm×39.8cm)のため、細部はウェブでは分かりにくいかもしれません。ぜひ会場でご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月31日 ]

江戸通になる本

秋山 忠彌 (著)

新人物往来社
¥ 700

 
会場太田記念美術館
開催期間2014年2月1日(土)~2月26日(水)
所在地 東京都渋谷区神宮前1-10-10
TEL : 03-5777-8600
HP : http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2602-katsushikaoi.html
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