フィンランドを代表する建築家・デザイナーであるアルヴァ・アアルト。ユーロが導入されるまで使われてていた50フィンランド・マルッカ紙幣にも、その肖像が描かれていました。
展覧会は、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムとアルヴァ・アアルト美術館の企画による国際巡回展。日本では実に20年ぶりとなる、アアルトの大回顧展です
アルヴァ・アアルトは1898年、フィンランド中西部のクオルタネ生まれ。ヘルシンキ工科大で建築を学びました。1924年に4歳年上の建築家アイノ・マルシオと結婚。アイノは生涯を通じて協働パートナーとなります。
活動の初期には、教会の設計競技の数多く応募。そのプランからは、新婚旅行で訪れたイタリアの影響が伺えます。
1933年に竣工したパイミオのサナトリウムは、代表作のひとつ。会場ではサナトリウムで用いられたベッドやキャビネットも展示。こちらもアアルトによるデザインです。
建築家として活動する一方、アアルトは家具や照明器具も手掛けています。家具においては、冷たいスチールの代わりに、温かみがある自然素材を多用。L字型の曲げ木の脚「L-レッグ」では特許を取得し、この技術で50を超える製品が生まれています。
アアルトはイッタラ社(当時はカルフラ=イッタラ)のガラス器もデザイン。中でも、ヘルシンキのレストランのためにデザインされた有機的なフォルムの《サヴォイ・ベース》は特に有名で、フィンランドデザインのアイコンといえる存在になりました。
会場後半には、数々の建築模型のほか、引き出し状の展示ケースで図面類も展示されています。実現しなかったプランもあり、パーレビ国王から依頼されたイラン・シラーズの美術館は、イスラム革命によって頓挫しています。
会場内で紹介されているアルヴァ・アアルト建築の写真は、ドイツの写真家アルミン・リンケが国際巡回展のために撮り下ろしたもの。自然と共存する美しい建築の姿が伝わります。展覧会は葉山(神奈川)、名古屋を経て東京展で3会場目。この後に青森県立美術館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年2月15日 ]