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尾形光琳の燕子花図

■大発見の再会も
【会期終了】 根津美術館が誇る、国宝《燕子花図屏風》。春の陽気とともに、年に一度のお披露目シーズンがやってきました。今回は、王朝文化・草花図・名所という三つの切り口でご紹介。別の屏風で、大発見もありました。
尾形光琳筆の国宝《燕子花図屏風》。描かれているのは群生するカキツバタだけですが、その題材は「伊勢物語」第九段の東下り、八橋の場面です。

東国に下る途中、三河国の八橋でカキツバタを目にした主人公。「かきつばた」の五文字を各句の冒頭においた「からころも きつゝなれにし…」と、遠くまで来た心境を歌に詠みました。

古典教養の定番といえる、伊勢物語。絵には橋も人も描かれていませんが、この絵で伊勢物語を思い起こすのは「お約束」です。

伊勢物語が成立したのは、王朝文化が栄えた平安時代という事で、第1章は「王朝文化への憧れ」。江戸時代は武士の時代。貴族の存在は軽視されがちですが、古来から続く王朝文化は、憧れを伴って受容されていました。



第2章は「草花を愛でる」。《燕子花図屏風》は、ここで紹介されています。

使われているのは濃淡の群青と、緑青のみ。近くで見ると、群青がたっぷりと使われている事が分かります。

群青の材料は藍銅鉱(らんどうこう)という鉱石ですが、精製に手間がかかるため、とても高価です。光琳の画業では比較的早い時期に描かれた《燕子花図屏風》ですが、画業への意欲に溢れた、野心的な作品といえるでしょう。

《燕子花図屏風》は、右隻と左隻のデザインが全く異なります。左隻は、池のカキツバタを上から覗き、右隻は遠くから眺めているよう(この感覚は、根津美術館の庭のカキツバタを見れば納得です)。装飾的でありながらも、実際のカキツバタが感じられます。

この章には、光琳が描いた別の草花図《夏草図屏風》も。こちらは、より後の時代に描かれたものです。

左下にはカキツバタも見られますが、《燕子花図屏風》より写実的です。光琳は工房を構えており、弟子である渡辺始興が関与しているかもしれません。

八橋はカキツバタの名所、という事で、第3章は「名所と人の営みを寿ぐ」。展覧会のメインが燕子花図屏風である事は間違いありませんが、ここには大発見といえる注目の作品が展示されています。

根津美術館の《伊勢参宮図屏風》が昨年修理され、本展への展示の準備を進めている段階で、対になる屏風が名古屋市博物館にあることが判明。急遽、並べて展示されました。

名古屋市博蔵が右隻、根津美術館蔵が左隻。あわせると六曲一双で、宮川の渡しから伊勢神宮の内宮に至る、参宮道の賑わいが描かれています。

根津嘉一朗が左隻を入手したのが昭和8年。以前の経緯ははっきりしませんが、少なくとも86年ぶりに、両者が対面した事になります。

先日、紙幣のデザイン変更が発表されましたが、現5,000円札は、表面が樋口一葉、裏面のカキツバタは《燕子花図屏風》です。使われているのは、右隻第六扇と第五扇(右隻の中央寄りの部分)。財布に入っていたら、見比べてお楽しみください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年4月16日 ]

もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品

仲町 啓子 (著)

東京美術
¥ 1,728

 
会場根津美術館
開催期間2019年4月13日(土)~5月12日(日)
所在地 東京都港区南青山6-5-1
TEL : 03-3400-2536
HP : http://www.nezu-muse.or.jp/
展覧会詳細へ 尾形光琳の燕子花図 詳細情報
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