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レポート
尾形光琳の燕子花図
根津美術館 | 東京都
大発見の再会も
根津美術館が誇る、国宝《燕子花図屏風》。春の陽気とともに、年に一度のお披露目シーズンがやってきました。今回は、王朝文化・草花図・名所という三つの切り口でご紹介。別の屏風で、大発見もありました。
(左から)《夏草図屏風》尾形光琳筆 / 国宝《燕子花図屏風》尾形光琳筆 江戸時代・18世紀
(左から)《観雪図》住吉広守筆 / 《舟遊・紅葉狩図》住吉広定筆 / 《小松引図》冷泉為恭筆
重要美術品《桜下蹴鞠図屏風》
(左から)《在原業平・和泉式部・紫式部図》清原雪信筆 / 《源氏物語図屏風》住吉具慶筆
《新古今和歌集抄》尾形宗謙筆
《尾形切(業平集断簡)》伝 藤原公任筆
《四季草花図屏風》伊年印
(左から)《伊勢参宮図屏風》/ 《伊勢参宮図屏風》名古屋市博物館蔵
《伊勢参宮道中図屏風》

尾形光琳筆の国宝《燕子花図屏風》。描かれているのは群生するカキツバタだけですが、その題材は「伊勢物語」第九段の東下り、八橋の場面です。


東国に下る途中、三河国の八橋でカキツバタを目にした主人公。「かきつばた」の五文字を各句の冒頭においた「からころも きつゝなれにし…」と、遠くまで来た心境を歌に詠みました。


古典教養の定番といえる、伊勢物語。絵には橋も人も描かれていませんが、この絵で伊勢物語を思い起こすのは「お約束」です。


伊勢物語が成立したのは、王朝文化が栄えた平安時代という事で、第1章は「王朝文化への憧れ」。江戸時代は武士の時代。貴族の存在は軽視されがちですが、古来から続く王朝文化は、憧れを伴って受容されていました。



第2章は「草花を愛でる」。《燕子花図屏風》は、ここで紹介されています。


使われているのは濃淡の群青と、緑青のみ。近くで見ると、群青がたっぷりと使われている事が分かります。


群青の材料は藍銅鉱(らんどうこう)という鉱石ですが、精製に手間がかかるため、とても高価です。光琳の画業では比較的早い時期に描かれた《燕子花図屏風》ですが、画業への意欲に溢れた、野心的な作品といえるでしょう。


《燕子花図屏風》は、右隻と左隻のデザインが全く異なります。左隻は、池のカキツバタを上から覗き、右隻は遠くから眺めているよう(この感覚は、根津美術館の庭のカキツバタを見れば納得です)。装飾的でありながらも、実際のカキツバタが感じられます。


この章には、光琳が描いた別の草花図《夏草図屏風》も。こちらは、より後の時代に描かれたものです。


左下にはカキツバタも見られますが、《燕子花図屏風》より写実的です。光琳は工房を構えており、弟子である渡辺始興が関与しているかもしれません。


八橋はカキツバタの名所、という事で、第3章は「名所と人の営みを寿ぐ」。展覧会のメインが燕子花図屏風である事は間違いありませんが、ここには大発見といえる注目の作品が展示されています。


根津美術館の《伊勢参宮図屏風》が昨年修理され、本展への展示の準備を進めている段階で、対になる屏風が名古屋市博物館にあることが判明。急遽、並べて展示されました。


名古屋市博蔵が右隻、根津美術館蔵が左隻。あわせると六曲一双で、宮川の渡しから伊勢神宮の内宮に至る、参宮道の賑わいが描かれています。


根津嘉一朗が左隻を入手したのが昭和8年。以前の経緯ははっきりしませんが、少なくとも86年ぶりに、両者が対面した事になります。


先日、紙幣のデザイン変更が発表されましたが、現5,000円札は、表面が樋口一葉、裏面のカキツバタは《燕子花図屏風》です。使われているのは、右隻第六扇と第五扇(右隻の中央寄りの部分)。財布に入っていたら、見比べてお楽しみください。


[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年4月16日 ]


もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品

仲町 啓子 (著)

東京美術
¥ 1,728

会場
会期
2019年4月13日(土)~5月12日(日)
会期終了
開館時間
10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(ただし、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
住所
東京都港区南青山6-5-1
電話 03-3400-2536
公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
料金
一般 1,300(1,100)円 / 学生 1,000(800)円 / 中学生以下 無料

※( )内は前売券および20名以上の団体料金
※前売券は、根津美術館ミュージアムショップにて、2月28日(木)~3月31日(日)の期間で販売
展覧会詳細 尾形光琳の燕子花屏風 詳細情報
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