“timeless design product(時代を超えた製品)”として発展してきたフィンランドのデザイン。「生活の中の美」をミュージアムのテーマに掲げているサントリー美術館には、うってつけの企画といえます。
フィンランドのデザインは家具、陶磁器、テキスタイル、雑貨とさまざまな分野で高い評価を得ていますが、本展はガラスにフォーカス。それも、王室や貴族のために作られた一点ものではなく、普段のくらしの中で使われてきた日用品が主体となっています。
プロローグ~第I章会場はプロローグ「18世紀後半~1920年代 黎明期」の後に、「1930年代 躍進期」「1950年代 黄金期」「1960・70年代 転換期」「フィンランド・ガラスの今 Art&Life」の4章構成。
会場のあちこちには、インスタレーションやイメージ展示もあります。「展示を通して、フィンランドという国全体を体感してもらえるように心がけた」(サントリー美術館学芸副部長の土田ルリ子さん)とのことです。
会場入口には、プロジェクターを使ったイメージ映像。フィンランドは1917年にロシアから独立(まだ100年も経っていない若い国なのです)。ガラス製品は以前から作られていましたが、当初はドイツやベネチアなどの模倣が中心でした。独自のスタイルを確立していったのは、国際展でフィンランドのデザインが注目されるようになった1930年代のことです。
この時期に活躍したのが、アイノとアルヴァルのアールト夫妻(「アルヴァ・アアルト」と書かれることもあります)。アイノの「Bölgeblick」シリーズ、アルヴァルの「Savoy」シリーズは、マイナーチェンジを繰り返しながらも、現在もイッタラ社から発売されています。
アイノ・マルシオ=アールト《プレスガラス 4056/4052/4056/4644》1932年制作 カルフラ社製 フィンランド国立ガラス美術館蔵 と、アルヴァル・アールト《アールトの花瓶 3030/9750》1937年制作 カルフラ社製 個人蔵戦後はカイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラらの企業デザイナーが活躍し、フィンランド・デザインは黄金時代に。その後は次第に日用品からアートの分野に転換していく傾向も見られます。
第IV章「フィンランド・ガラスの今 Art&Life」3階の吹き抜けスペースでは、ハッリ・コスキネンによるクリスマスツリーをイメージしたインスタレーションもあります。この作品のほか、展示室内の3カ所に限り写真撮影ができるのもポイント。カメラをお持ちの方はお忘れなく。(取材:2012年11月20日)