昨今特に注目度が高まる浮世絵。中でもダイナミックなモチーフで人気の歌川国芳(1797-1861)からルーツを受け継いだ月岡芳年(1839-1892)、並びに弟子たちの活躍をたどった展覧会がはじまりました。

京都文化博物館

企画展 はじまる
「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」は名古屋市博物館が所蔵する150点の浮世絵が主役ですが、なんとこれらは二人のコレクターによる蒐集コレクションが軸になっていました。 短歌・小説に造詣の深い国文学者・尾崎久弥(おざききゅうや1890-1972)と泌尿器研究第一人者の医学者・高木繁(たかぎしげる1881-1946)です。
近代の浮世絵研究においていち早く国芳の魅力に着目し、作品の紹介普及に努めた功績により、私たちは今多くの作品を観ることができるのです。

二人のコレクター
今回は歌川国芳とその弟子たちによる浮世絵と対峙した工夫と挑戦をたどった内容で進みます。まずは“ヒーローに挑む”武者絵。国芳の得意とした歴史上や物語に登場するヒーローの勇姿を描いた躍動感あふれる作品です。
歴史的名場面を切り取って主役脇役そして背景が隙間なく描かれ、3Dのような立体感に迫るようなダイナミックさを画面いっぱいに表現します。大判三枚続の版で素早く量産する手法もあれば縦長に並べてモチーフに合わせたりもしました。いかに力強さを表現するか、配置と表現の斬新さが継承されています。

歌川国芳 「源頼光土蜘蛛退治」高木繁コレクション

月岡芳年「清玄堕落之図」高木繁コレクション
次は“怪奇に挑む”です。好奇心から更なる刺激を求めたような幽霊・妖怪・血みどろ絵です。その怪奇さを表現するために、一度は目にしたことがある巨大な骸骨絵はきちんと医学書を参考とした描写がみられたり、印刷技術を駆使した痕跡がみられます。
落合芳幾と月岡芳年が手掛けた「英名二十八衆句」は全28図が一挙に公開。血手形足型の版木や赤絵具に膠を混ぜて血糊を表現したり、見る角度によって浮かび上がる模様をつくる彫り摺りの工夫が解明されています。

歌川国芳「相馬の古内裏」高木繁コレクション

月岡芳年 右「英名二十八衆句 白井権八」 左「英名二十八衆句 福岡貢」 尾崎久弥コレクション

落合芳幾「英名二十八衆句 邑井長庵」尾崎久弥コレクション
更に美人画や役者絵は、女性のしぐさ表現に妖艶さを加味したり、歌舞伎役者の表情をストレートに描いてみたり生き生きとしています。時代を写すファッションや英字も登場しています。

月岡芳年「見立多以尽とりけしたい」尾崎久弥コレクション

落合芳幾「新吉原角街稲本楼ヨリ仲野之街仁和賀一覧之図」一部 尾崎久弥コレクション
そして国芳の“戯画”。当時の話題や風刺をネタにした作品は人々の人気と噂で抜群のウケ。世情の表裏を擬人化やアイデアでかわす知恵を絞った表現です。それぞれの表情が似顔絵だったりするのですぐ誰なのか判るんです。

歌川国芳「亀喜妙々」高木繁コレクション

歌川国芳「里すゞめねぐらの仮宿」高木繁コレクション
最後は「芳」ファミリーについての考察となります。歌川国芳はびっくりするほど多くの弟子に慕われ、画号に「芳」の字を用いて画業と技をつなぎました。
最後の1枚には中央に太く「よし」。終わり良ければ総て良しでしょうか? 右上に芳桐印の着物を着て背中をむけた猫好きの人、国芳もいます。江戸から明治へと時代の変遷をいち早く取り込み、様々な工夫で浮世絵を発展、活性化した芳ファミリーの面々は今もどこかでその系譜を継いでいて出番を待っているような気がします。 ビッグボス国芳、頼もしい限りです。

芳の系譜

月岡芳年「伎紫田舎源氏」尾崎久弥コレクション

歌川国芳「浮世よしづ久志」高木繁コレクション
会場の京都文化博物館は京都のアート好きには欠かせない場所です。ゆったりと落ち着いた展示室や伝統ある店とのコラボグッズなどが人気です。今回の展覧会は全作品撮影OKでした。お気に入りの挑む浮世絵のマイアルバムを楽しむこともできました。
近代建築が並ぶ三条通りを散歩する楽しみがいつもあります。今日も浮世絵を満喫して河原町方面へ。六曜社の珈琲と名物ドーナツで一休みして帰りました。

ミュージアムグッズコーナー

レトロ喫茶代表格 六曜社

温かいドーナツでスイーツタイム
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年2月25日 ]
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