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    レポート
    「買上展」藝大コレクション展2023 
    東京藝術大学大学美術館 | 東京都
    卒業・修了制作の中から各科ごとに特に優秀なものを選定した「買上」作品
    卒業後に日本近代美術史を牽引した作家たちによる渾身のデビュー先を展示
    研究領域が拡大、表現も多様化。大きさや形状を問わず買上金額は一律です

    東京藝術大学で、卒業・修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し、大学が購入する「買上」制度。前身の東京美術学校での買上も含め、同大学では1万点以上の学生制作作品を所蔵しています。

    その中から厳選された約100件の買上作品を通して、日本の美術教育の歩みを振り返る展覧会が、東京藝術大学大学美術館で開催中です。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」
    東京藝術大学大学美術館「買上展」


    展覧会は2部構成で、第1部は「巨匠たちの学生制作」。東京美術学校を卒業した後に、美術界の各分野を主導した作家たちの作品です。

    冒頭の木彫《元禄美人像》は、板谷波山の卒業制作です。後に陶芸家として初の文化勲章を受賞する波山ですが、当時の東京美術学校では彫刻科卒業。高村光雲の指導を受けており、その力量がよくわかります。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」会場より 右手前)板谷波山《元禄美人像》1894年
    (右手前)板谷波山《元禄美人像》1894年


    横山大観をはじめ、巨匠の作品がずらりと並ぶのが近代日本画です。菱田春草の《寡婦と孤児》は「化け物絵」と酷評されたものの、岡倉天心の采配で首席になり、買上となりました。

    なお、青木繁、萬鉄五郎、藤田嗣治らの卒業制作は買い上げられず、自画像だけが納められているのは、意外に思えます。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」会場より (左から)平福百穂《田舎嫁入》1899年 / 菱田春草《寡婦と孤児》1895年
    (左から)平福百穂《田舎嫁入》1899年 / 菱田春草《寡婦と孤児》1895年


    続く第2部は「各科が選ぶ買上作品」。東京藝術大学では昭和28年(1953)から買上制度がはじまり、今年でちょうど70年。現在では多くの科で首席卒業と位置づけられています。

    日本画は、1981年度に台東区長賞が創設されて以来、卒業制作の首席が台東区長賞、修了制作の首席が大学買上になることが多くなっています。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」会場より (左手前)梅原幸雄《遠い記憶》1978年
    (左手前)梅原幸雄《遠い記憶》1978年


    建築の買上作品を見ると、時代とともにテーマや表現が変わっているのがよくわかります。本展では東京藝術大学が設置された1949年から今日までを5期に分け、各期から1作品ずつ展示しました。

    《東京芸術大学改築案》は1952年の作品。奥村と吉田は東京美術学校の最後の卒業生で、既存のキャンバスの問題点を検証。大学の改革案を構想しました。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」会場より 奥村昭雄 吉田桂二《東京芸術大学改築案》1952年
    奥村昭雄 吉田桂二《東京芸術大学改築案》1952年


    近年は先端芸術表現、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、映像研究など研究領域も広がり、表現方法も多様化しています。それぞれの科ごとに、買上の選定意図などを添えて作品が展示されています。

    鎌田友介《Other perspectives ― The entrance ―》は、先端芸術表現の買上作品。多視点が同時に存在する空間をたちあげるシリーズで、厳島神社のような水上建築のイメージをベースにしています。


    東京藝術大学大学美術館「買上展」会場より 鎌田友介《Other perspectives ― The entrance ―》2011年
    鎌田友介《Other perspectives ― The entrance ―》2011年


    大学による買上作品を見ていくことは、大学が美術をどう考えていたかを見ることと同義です。「80年代の買上作品」など、一定期間に絞った作品展も見たくなりました。

    ちなみに「買上」なので作者には代金が支払われますが、作品の大小、形状にかかわらず、一律で30万円。物価変動による価格変更もないとのことです。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年3月30日 ]

    (中央)高村光太郎《獅子吼》1902年
    (右手前)朝倉文夫《進化》1907年
    (左)大西博《LA TRUITE(鱒)》1987年
    越田乃梨子《壁・部屋・箱 ― 破れのなかのできごと》2008年
    岡ともみ《岡山市柳町 1-8-19》2017年
    松永忠興《塑像心木》付属品 1969年
    会場
    東京藝術大学大学美術館
    会期
    2023年3月31日(金)〜5月7日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時 - 午後5時(入館は午後4時30分まで)
    休館日
    月曜日 ※ただし、5月1日(月)は開館
    住所
    〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://museum.geidai.ac.jp/
    料金
    一般1200円、大学生500円、高校生以下及び18歳未満は無料
    ※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
    展覧会詳細 「買上展」藝大コレクション展2023  詳細情報
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