世界遺産 教王護国寺(東寺)は平安京国家鎮護のため官立寺院として創建されました。その後嵯峨天皇から託された弘法大師空海は伽藍の造営に取り組み、日本ではじめての真言密教の道場を誕生させます。
そして今年、真言宗立教開宗1200年の節目を迎え、お大師さまの精神を伝える真言密教根本道場と10年以上をかけて修理完成した数多くの宝物を特別公開することになりました。

平安京のシンボルともいえる東寺はいつも多くの人々を迎えてくれます
境内伽藍には風格ある建物が配置され、守られてきた仏像数には驚くべきものがあります。講堂(重要文化財)には大日如来を中心に、五智如来、五菩薩、五大明王、四天王など21躰に及ぶ仏像で密教の世界を立体曼荼羅として視覚的に優美な世界を展開しています。

国宝金堂と重要文化財講堂

講堂に一歩入れば立体曼荼羅の世界観が広がります
金堂(国宝)にはどっしりとした3躰、ご本尊の薬師如来の台座は十二神将が支え、日光・月光菩薩が両脇をかためて静かな祈りの空間を作っています。

金堂では抑えた色彩で落ち着く空間
宝物館には羅城門の楼上に安置されていたとされる兜跋毘沙門天立像をはじめ、文化財修復に取り組んできた成果を間近で見ることができる展示となっています。国宝「両界曼荼羅図」(前期)、国宝「弘法大師尺牘」(後期)などが公開されますが、時を経ても美しい彩色や平安時代初期三筆の一人である弘法大師の筆遣いは一見の価値があります。

宝物館の展示風景
食堂では『古寺巡礼』で有名な写真家土門拳の写真展も開催されています。東寺を訪れた土門拳が密教美術に魅せられて撮影した仏像や建物が美しさを伝えます。こだわりのある独自の撮影法は細部にも光をあてられ、息をのむような写真が並びます。

食堂で開催の土門拳東寺写真展の風景
東寺のシンボル五重塔は内部の荘厳さに驚くばかりです。心柱を中心に四方に向けて仏像が配置され、更には細部にも彩色された天井や梁などが色鮮やかに残っています。何度も焼亡を繰り返し、現在は5代目。高さ55mは現存する木造塔として最高。この日はあいにくの小雨でしたが1200年記念法要が営まれ、心に響く読経の声にいつの間にか私の呼吸も整う感覚がありました。

凛としたシルエットの五重塔

真言宗立教開宗1200年の法要の様子

五重塔初層内部
このほかにも、東寺の子院「観智院」や、「灌頂院」での小松美羽氏の「ネクストマンダラ」作品も鑑賞でき、たっぷり時間をかけた拝観がお勧めです。

灌頂院での特別公開「小松美羽《ネクストマンダラー大調和》
まさに今なら「東寺のすべて」を知るための材料は多く、いつもと違う東寺を散策することができます。チケットと一緒にもらえる小さなしおりにはQRコードがついていて、解説などを聞けるのは大変便利です。是非スマホとイヤホンを持ってお出かけください。
「東寺のすべて」をご覧いただけるのは10/9~10/31までと少々短いのですが、宝物館での2023年秋期特別公開は前期(9/20~10/21)・後期(10/22~11/25)で展示入替を挟みながら開催されます。私のお勧めは夕陽に映える五重塔のシルエット、初秋の京都で平安京のシンボルと言える東寺が伝える宝物を見て、悠然と流れる平和な時間を感じながらお過ごしいただければと思います。
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2023年10月8日 ]
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
→ 詳しくはこちらまで