サントリー美術館が入っている東京ミッドタウンがある場所は、遡れば江戸時代前期から幕末にかけて、長州藩毛利家の下屋敷(江戸麻布屋敷)がありました。
山口県防府市の公益財団法人毛利報公会(
毛利博物館)が特別協力する本展。毛利家にとっては「里帰り」の展覧会ともいえます。
展示の目玉は、室町時代の水墨画の巨匠・雪舟等楊が描いた国宝「四季山水図」(山水長巻)。毛利家の中で永く大切にされてきた画巻で、日本絵画史上の最高傑作のひとつです。東京圏では実に10年ぶりの特別公開となりました。
その他も毛利家の基本史料である文書類や、肖像画、甲冑武具、調度類、華麗な能装束、茶道具を中心に、絵画・工芸の名品が一堂に展示されています。
会場は「戦国武将の雄 毛利元就から輝元まで」「『山水長巻』の世界 雪舟と水墨画」「受け継がれた美意識 毛利家の典籍と絵画」「暮らしにみる大名文化 婚礼調度と雛飾り」「能楽と茶の湯の世界 毛利家ゆかりの道具類」「毛利家と江戸麻布屋敷 近世から現代へ」の6章を、4階と3階の2フロアで構成。
内覧会での撮影は4階のみでしたので、ここでは紹介していない数多くの名品も展示されています。
有名な「三本の矢」の逸話が描かれた文書は、三子教訓状(さんしきょうくんじょう)。もちろん毛利元就の直筆です。
宗家を継いだ長男の毛利隆元と、他家を継いだ次男・吉川元春と三男・小早川隆景の一致団結を訴えた書、これを含む「毛利家文書」は、重要文化財に指定されています。
展覧会の最後には、江戸麻布屋敷の建物の配置図と、現在の東京ミッドタウンの敷地図があわせて展示されています。
以前の当地に思いを馳せながら鑑賞すると、より感慨深く感じられることでしょう。(取材:2012年4月13日)
※作品保護のため会期中、展示替を行います