「不思議の国のアリス展」が兵庫県立美術館で開催されています。
ずっと昔、奇妙な世界に引きずり込まれるようにして読んだ物語。
170か国以上で翻訳されたこのお話、さし絵もたくさんの人によって描かれ、アニメーションや映画にもなっています。
なぜこのお話がこれほど人々を惹きつけるのか、多様な作品を通じて探り出そうという展覧会です。
展示は3つの章で構成されています。
第1章は、始まりの話―アリス誕生。
不思議の国のアリスは、作者のルイス・キャロルが、アリスという名の実在の少女に語って聞かせた物語をまとめたもの。
こちらは、キャロル自身によるスケッチです。アリスの姿も描かれています。
(神戸会場のみの展示です)
ルイス・キャロル「『アリス』のスケッチ」©The Governing Body of Christ Church, Oxford
物語の中のアリスの容姿について、かなりはっきりとイメージをもっていたようです。
展覧会の広告では、最初に本が出版された時のさし絵が使われています。ジョン・テニエルというさし絵画家によるもの。
これは、アリスが抱っこしていた赤ちゃんが子ブタに変わってしまった場面。
さし絵にこだわりのあったキャロルは、テニエルの絵にも細かく注文をつけていたそうです。
アリスの物語は人気を呼び、その後もさまざまな画家が手がけました。こちらに並んでいる本は、その一部。
多くの言語に訳されただけでなく、同じ言語でも多くの翻訳が出ているのがこの本の特徴だそうです。
調べてみると、日本でも意外な文豪が訳していたりして驚きます。
第2章は、アリスの物語―不思議の国への招待。
キャロルは「不思議の国のアリス」と、その続編にあたる「鏡の国のアリス」を書きました。
2つの物語の見せ場を、7人のアーティストが描いています。
こちらのさし絵は、ほのぼの明るい印象です。
ヘレン・オクセンバリー「『不思議の国のアリス』第7章より《へんなお茶会》」©Helen Oxenbury
第1章で紹介されたアリスと比べると、かなり現代的。
ヘレン・オクセンバリーという絵本作家によるものです。
第3章は、アートの国―世界が愛する永遠のアリス。
本を飛び出し、映画やアニメーション、写真や絵画などで表現されたアリスです。
映画化されたもの(1908年制作、約8分)もあり、会場で見ることができます。
奇妙な扮装をした人(人以外も)が動きまわっていて、なんとなくのどかな雰囲気です。
こちらは、ロシアの写真家による作品です。
ウラジミール・クラヴィヨ=テレプネフによる作品
小説が映画化されたものなどを見て違和感を覚えることがありますが、こちらは原作のイメージ通り。作者のキャロルも感心するのでは?
(左)清川あさみ 《青いイモムシ》 (右)《涙の池》
これも、もうひとつのアリスの世界。スパンコールやレースなども使われていて、華やかな雰囲気。
作者は清川あさみさんです。
このコーナーでは、ダリによる抽象画のような絵や、草間彌生さん、版画家の山本容子さんらの作品も展示されています。
百花繚乱の展示を見ていると、この物語の何が、これほどたくさんの人を惹きつけるのかな、と思います。
物語は、最後にアリスが夢から目覚めて、すべて夢の中の出来事だったと気づくところで終わります。
おかしな登場人物、脈絡のないストーリー、あっけない幕切れ…。
目覚めたときに忘れてしまっているだけで、わたしたちもアリスと同じような夢を見ているのかも。
どうしても思い出せない何かがあるから、心が惹かれて、“自分のアリス” を描きたくなるのかな…という気がします。
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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