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    レポート
    月 ─ 夜を彩る清けき光
    渋谷区立松濤美術館 | 東京都
    表現された「月」の数々
    美しい自然の姿を愛する気持ちはどの地域でも見られますが、「月」に対する思い入れが強いのは、日本人が持つ美意識の特徴のひとつです。絵画や工芸において、古来から表現されてきた月。渋谷区立松濤美術館で開催されている月をテーマにした展覧会は、11月から後期展に入っています。
    (左から)《月兎漕舟図》源長常(一宮長常)個人蔵 / 《清光淡月兎図》中林竹洞 頴川美術館蔵
    《瀟湘八景図》久隅守景 頴川美術館蔵 ※展示は11/10まで
    《雪月花図》勝川春章 摘水軒記念文化振興財団蔵
    《武蔵野図屏風》東京富士美術館蔵
    (左から)《読書立志図》富岡鉄斎 鉄斎美術館蔵 / 《《砧打図》富岡鉄斎 鉄斎美術館蔵
    《月百姿 貼込帖(月百姿100点揃)》月岡芳年 徳川美術館蔵 ※11/11から場面替え
    (左から)《染付山水文皿》戸栗美術館蔵 / 《《色絵草花文角瓶》戸栗美術館蔵
    《花宴蒔絵硯箱(源氏物語蒔絵箔箱附属品)》徳川美術館蔵
    (手前)《黒漆塗頭形兜》伝 柴田家武将所用 個人蔵
    日本の美を表す「花鳥風月」と「雪月花」。月は花とともに両方に入っていますが、花はともかく、月をこれほど好むのは日本ならではの独特の感性です。

    展覧会では月を描いた絵画をはじめ、蒔絵調度や陶磁器、そして刀装具や武具まで、月が表現された品々を幅広く紹介。日本人の心に脈々と流れる月への想いを紐解いていきます。

    後期展の冒頭は名所浮世絵から。中国の山水画の典型である瀟湘八景、その日本版といえるのが近江八景で、その中の月の名所が「石山の秋月」です。


    会場入口から

    月が登場する物語ですぐ思いつくのは、竹取物語。「物語のおや」ともいわれる日本最古の物語で、屏風や絵巻など絵画としても表現されています。

    源氏物語と月の関係がピンとくる方は、おそらく古典好きでしょう。紫式部が琵琶湖に映った月を見た事が、源氏物語の着想に繋がったといわれています。

    ユニークな作品が《武蔵野図屏風》。月は天上ではなく、草むらに潜むように描かれています。古来から詠まれている和歌「武蔵野は月の入るべき山もなし草より出でて草にこそ入れ」に因んだ表現です。


    第1章~第4章

    展示は上階に続きます。

    幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年。晩年に描いた揃物「月百姿」で、武将から妖怪までさまざまなモチーフを月と組み合わせました。抜群の構図感覚は、さすが芳年です。

    月の意匠は武具にもしばしば見られます。満ち欠けを繰り返す月は復活や再生のシンボルにもなり、武将に愛好されました。

    忘れてはならないのが、暦としての月。明治時代まで太陰暦を用いていた日本は、月の満ち欠けは生活の基本でもありました。12カ月に因んだ尾形乾山の名品などが並びます。


    第5章~第7章

    多彩な作品が揃い見ごたえたっぷりの構成ですが、会期は残りわずか、渋谷区立松濤美術館だけでの開催です。お見逃しなく。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年11月2日 ]



    ■月 夜を彩る清けき光 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年10月8日(土)~11月20日(日)
    会期終了
    開館時間
    特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
    公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
    最終入館はいずれも閉館30分前までです。
    休館日
    10月11日(火)、17日(月)、24日(月)、31日(月)、11月4日(金)、7日(月)、14日(月)
    住所
    東京都渋谷区松濤2-14-14
    電話 03-3465-9421
    公式サイト http://www.shoto-museum.jp/exhibitions/170tsuki/
    料金
    一般1000円(800円)、大学生800円(640円)、
    高校生・60歳以上500円(400円)、小中学生100円(80円)
    ※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料です。
    ※障がい者とその付添の方各1名は無料です。入館の際に障がい者手帳等をご提示ください。
    ※金曜日に入館される渋谷区民の方は無料です。入館の際に住所のわかるものをご提示ください。
    ※土・日曜日、休日、小中学生は無料です。
    展覧会詳細 「月 ―夜を彩る清けき光」 詳細情報
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