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    レポート
    美ら島からの染と織 ― 色と文様のマジック
    渋谷区立松濤美術館 | 東京都
    高度な染織文化
    日本列島の南端から台湾にかけて、点のように連なる琉球諸島。明治時代以前には琉球王国として栄え、周辺の地域との交流から豊かな文化が実りました。紅型をはじめ、同地で発達した高度な染織文化を紹介する展覧会が、渋谷区立松濤美術館で開催中です。
    (左から)《絹草花模様両面紅型衣裳》玉那覇有公 作 2006年頃 沖縄県立博物館・美術館[全期間展示] / 《絹紺地芭蕉に蝶梅模様着物》藤村玲子 作 1983年頃か 沖縄県立博物館・美術館[展示期間:8/10~8/25] / 《絹白地経緯絣に両面浮花織着物》大城志津子 作 1983年 沖縄県立博物館・美術館[全期間展示]
    (左から)《桐板白地花籠燕文様両面紅型単衣裳》19世紀 一般財団法人 沖縄美ら島財団[展示期間:8/10~8/25] / 《木綿浅地波に桜千鳥模様衣裳》19世紀 沖縄県立博物館・美術館[展示期間:8/10~8/25]
    国宝《黄色地鳳凰牡丹文様紅型縮緬袷衣裳》18-19世紀 那覇市歴史博物館 [展示期間:8/10~8/25]
    (左から)《桃色地経緯絣苧麻衣裳》18-19世紀 那覇市歴史博物館[展示期間:8/10~8/25] / 《浅地経緯絣木綿衣裳》18-19世紀 那覇市歴史博物館[展示期間:8/10~8/25]
    《御絵図》19世紀 沖縄県立博物館・美術館[全期間展示、場面替え有り]
    (左から)《紺地紋入鶴亀牡丹文様苧麻紅型風呂敷》19世紀 那覇市歴史博物館[全期間展示] / 《苧麻紺地巴紋入松竹梅模様チリデーウスーヤー》 19世紀 沖縄県立博物館・美術館[全期間展示]
    (左から)《芭蕉・黄色地経緯絣衣裳(復元)》平良敏子 作 1996年 一般財団法人 沖縄美ら島財団[全期間展示] / 《芭蕉・朱地経縞緯絣衣裳(復元)》平良敏子 作 1996年 一般財団法人 沖縄美ら島財団[全期間展示]
    国宝《御絵図帳(7冊のうち3冊)》18-19世紀 那覇市歴史博物館[全期間展示、場面替え有り]
    (左から)《縮緬灰色地雲鳳凰に松藤水辺鳥文様衣裳》城間榮喜 作 1955年頃 沖縄県立博物館・美術館[展示期間:8/10~8/25] / 《絹深浅地花倉織衣裳(ベルリン国立民族学博物館所蔵染織品の復元製作)》祝嶺恭子 作 2009年 一般財団法人 沖縄美ら島財団[全期間展示]

    尚巴志王(しょう はし おう)により、1429年に成立した琉球王国。明治政府による1879年の琉球処分まで、琉球王国はちょうど450年間続きました。現在でも沖縄に残る多くの工芸技術は、この時代に根付いたものです。


    琉球王国は、中国(明・清)と冊封関係にあるとともに、薩摩を介して日本にも使者を送っていました。沖縄の特徴的な染織は、中国と日本、さらに東南アジアや朝鮮など、東アジアの交易の中で育まれたといえます。


    展覧会は5章構成。第1章は、沖縄を代表する染物の技法「紅型」です。


    明るく華やかな色使いで知られる紅型。原色の組み合わせは、日本の他の地域の織物ではあまり見られません。


    紅型で使用される文様には、桜や霞など日本(大和)的なものと、鳳凰や龍など中国的なものが見られます。ここにも沖縄の地域的な特性が現れています。


    展覧会では、沖縄県初の国宝「琉球国王尚家関係資料」に含まれる紅型の衣裳も展示されています。手間がかかる意匠は、王族ならではです。



    第2章は「沖縄の織物」。沖縄は湿潤亜熱帯に属するため、芭蕉など特徴的な繊維の素材も用いられます。


    同じ展示室で、第3章より先に紹介されているのが、第4章「沖縄染織の道具」。紅型の型紙は、柿渋を塗った奉書紙(ほうしょがみ)という和紙。型紙を彫る道具も、工房で手作りされます。


    2階の展示室では、貴重な衣裳を露出展示しています。美しい色と文様を、至近距離で楽しめます。


    第3章は「多彩な染織品の数々-着物以外の染織品」。ウチェキー(風呂敷)は包む、掛ける布。チリデーウスーヤーは盆にのせた品物の覆い布。ティサージは手拭ですが、航海のお守りや贈り物にも使われていました。


    最後の第5章は「伝統を伝えて-現代の染織品」。重要無形文化財の保持者(人間国宝)など、現代の作家が手掛けた作品は、復元と創作の2種。復元は近世琉球期の染織品や、欧米の博物館に収集された染織品など。創作の作品も、伝統的な素材や技法が用いられています。


    沖縄をテーマにした展覧会はしばしば開催されますが、全ての展示品が制作地の沖縄からの出陳というのは、珍しい試みです。巡回はせずに、渋谷区立松濤美術館だけでの開催です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年8月9日 ]


    ※会期中に展示替えがあります。


    フランス人がときめいた日本の美術館フランス人がときめいた日本の美術館

    ソフィー・リチャード(著)

    集英社インターナショナル
    ¥ 2,376

    会場
    会期
    2019年8月10日(土)~9月23日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
    公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
    最終入館はいずれも閉館30分前までです。
    休館日
    月曜日(ただし、8月12日、9月16、23日は開館)、8月13日(火)、9月17日(火)
    住所
    東京都渋谷区松濤2-14-14
    電話 03-3465-9421
    公式サイト https://shoto-museum.jp/
    料金
    一般 500(400)円 / 大学生 400(320)円 / 高校生・60歳以上 250(200)円 / 小中学生 100(80)円

    ※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料
    ※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料
    ※毎週金曜日は渋谷区民無料 *障がい者及び付添の方1名は無料
    ※リピーター割引:本展の有料入館料を、観覧日翌日以降の会期中に提示すれば、通常料金から2割引きでご入館できます。同一半券の提示は1回限り有効です。
    展覧会詳細 美ら島からの染と織 ― 色と文様のマジック 詳細情報
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