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レポート
フランソワ・ポンポン
佐倉市立美術館 | 千葉県
フランスで活躍した彫刻家フランソワ・ポンポンの日本初の回顧展が巡回中
シロクマや豹、ペリカンなどしなやかで美しいフォルムの動物たち約90点
ポンポンに影響を受けたとされる、佐倉ゆかりの金工家・津田信夫の作品も

シロクマや豹、フクロウなどの動物彫刻で知られているフランスの彫刻家フランソワ・ポンポン(1855-1933年)。フランスのディジョン美術館、フランソワ・ポンポン美術館や群馬県立館林美術館の所蔵する作品約90点から、ポンポンの制作の全貌をたどる日本初の回顧展が千葉県の佐倉市立美術館に巡回中です。



佐倉市立美術館


1855年にフランス中部の旧ブルゴーニュ地方の木工家具職人の家に生まれたポンポン。美術学校に通った後、パリで墓石を彫る仕事をする傍らデッサンと彫刻を学びます。

彫刻と言えば人物像が優位だった当時、ポンポンも人物像での成功を目指し、身近な人の頭像や胸像の制作に励みます。『レ・ミゼラブル』の登場人物であるコゼットや聖女像など、文学や宗教をテーマに取り入れた感情豊かな彫刻を生み出します。



フランソワ・ポンポン展 展示風景


サロンの受賞があっても、なかなか国の買い上げまで認められることがなかったポンポン。建築装飾や彫刻家の下彫りなどパリに出てからの約40年間は、生活の糧を得るための仕事に割かれていました。

1890年から約5年間、彫刻界で活躍をしていたオーギュスト・ロダンのもとで大理石の下彫り職人として働きます。後に、このこともきっかけとなり、ポンポンは動物彫刻の制作に方向転換します。



《ブーヴルイユの教会》 1900年頃 群馬県立館林美術館


1896年にロダンのもとを離れたポンポンは、彫刻家ルネ・ド・ポール ド・サン=マルソーのもとで仕事を手伝います。 マルソーのアトリエがあったパリ北西のノルマンディー地方の小さな村にポンポンも家を買い、鶏やガチョウ、牛や豚などの家畜を何時間も追いかけながら動物観察を行っていきます。

ポンポンの動物観察は、制作台を首からぶら下げて粘土で大まかな形を捉える塑像やスケッチ、動物の寸法を細かく記していくこともありました。



石膏作品


石彫り職人だったポンポンは、動物を石彫りにもしました。動物の形を石の塊から浮かび上がらせ、表面の仕上げにコントラストをつけた初期の石彫り作品には、ロダンからの学びが色濃く現れています。



(左から)《オラン・ウータン(頭部)》 1930年 群馬県立館林美術館 / 《大鹿》 1928-1929年 群馬県立館林美術館


大型石膏をサロンで発表する中で、実業家からブロンズの発注を受けるようにもなります。 次第に展覧会などの大きな仕事も増えますが、ポンポンは知人や動物愛好家からの注文にも応え、子どもたちやペットの犬をモデルとした作品も作り続けます。

会場には、ポンポンを慕っていた彫刻家アンリ・マルティネによるポンポンの頭像も展示されています。 「動物は人間と同じだ」と語っていたポンポンは、穏やかな人柄と熱心な仕事ぶりで人と動物へ愛情あるまなざしを注ぎ続けました。



(左から)《ポンポンと鳩ニコラ》 群馬県立館林美術館 / 《切断された巣の雄鳩》 1928-1931年 群馬県立館林美術館


下積み時代が長かったポンポンですが、その名を一躍広めたのが67歳の時にサロンに出品した《シロクマ》です。長さ2.5mもの大きな石膏は、しなやかで力強い堂々とした安定感を感じさせる作品です。

“動きが彫刻に生命感を与える”というロダンからの教えから追求した首でバランスをとって歩く姿は、四足動物の豹シリーズでも取り組まれます。



豹シリーズ


1921年から制作された豹シリーズですが、歩く豹の姿はいくつかの段階を経て洗練されていきます。巻き型だった尻尾は伸び、足は太く低い重心に。頭から尻尾までなめらかで美しいフォルムからは、獲物を狙う鋭い姿が見てとれます。



(中央)《大黒豹》 1930-1931年 群馬県立館林美術館


会場には、ポンポンに影響を受けたとされる佐倉ゆかりの金工家・津田信夫(1875‐1946年)の作品も紹介されています。津田は若い工芸家たちにヨーロッパの工芸事情等を伝え、モダニズム運動の推進者と評されています。留学後の津田の作品を特徴づけるものに動物置物があります。それらの作品は、自然の動きを単純化し、硬い金属で柔らかな姿態を表現しています。



津田信夫《隠霧澤毛》 1940年 佐倉市立美術館


《シロクマ》を発表した同時期の1925年、パリ開催された現代装飾美術・産業美術国際博覧会(アール・デコ博)に動物彫刻が出品されます。フランス大使館のパヴィリオンに展示された大型のシロクマは、各国からの来場者の目を引くこととなりました。 アール・デコ装飾と明快なフォルムの動物彫刻が通じ合い、装飾美術家からも関心を持たれるきっかけとなります。

亡くなる1933年まで精力的に制作を続けたポンポン。 会場に展示されている《シロクマ》の素材にはブロンズや磁器、銀合金や白色大理石などが使用され、作品ごとに質感を感じることができます。



《シロクマ》 1923-33年 群馬県立館林美術館


1階には、ポンポンのオリジナルグッズの揃ったミュージアムショップやコラボレーションしたカフェメニューもお楽しみいただけます。 

京都・愛知・群馬と巡回した「フランソワ・ポンポン展」も佐倉市立美術館での開催を含めて残り2会場です。

[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年2月8日 ]


《仔鹿》 1927-28年 群馬県立館林美術館
《アヒル》 1926年 群馬県立館林美術館
(左から)《シロクマ》1921-1924 《シロクマ》1923 -1933年 群馬県立館林美術館
《コゼット》 1988年 群馬県立館林美術館
豹シリーズ
アトリエの様子
1階 ミュージアムショップ
会場
佐倉市立美術館
会期
2022年2月3日(Th)〜3月29日(Tu)
会期終了
開館時間
10 00~ 18 00 (入館は 17 30 まで)
休館日
月曜日※但し、 3 月 21 日(月・祝)は開館、 3 月 22 日(火)は休館。
住所
〒285-0023 千葉県佐倉市新町210
電話 043-485-7851
公式サイト https://pompon.jp/information/
料金
一般 800 (640)円
大学・高校生 600(480)円、
中・小学生 400 (320 )円、
未就学児無料
()内は前売り及び 20 名以上の団体料金
展覧会詳細 フランソワ・ポンポン 詳細情報
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