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    レポート
    西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み
    五島美術館 | 東京都
    平安時代末期の歌人・西行をテーマに、古筆・絵画・書物・工芸などを紹介
    23歳で突然の出家。亡くなった場所も定かではなく、謎に包まれたその実像
    数点しか伝わらない稀少な西行自筆の手紙など、国宝4件、重要文化財20件

    平安時代末期に活躍し、多くの和歌を後世に残した歌人、西行(1118-1190)。西行の実像は謎に満ちた部分も多く、その存在は「漂泊の歌人」のイメージとともに今日まで伝えられてきました。

    西行をテーマに、国宝4件、重要文化財20件を含む名品約100点を一堂に紹介する展覧会が、五島美術館で開催中です。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場入口
    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場入口


    まずは、肖像画風に描かれた西行像から。右手には冊子、左手には数珠を持った、僧の姿の西行。細い線を重ねるように、特徴ある長い眉や皺が描かれた優品ですが、筆者はわかっていません。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 《西行像》MOA美術館蔵
    《西行像》MOA美術館蔵


    西行の真筆はほとんど残っていませんが、数少ない作品のひとつが、国宝《一品経和歌懐紙》です。西行が題とともに自詠の和歌を二首、それぞれ三行で書いたものです。

    筆致は繊細かつ流麗で、西行の筆跡を知るための基準作品としても、極めて価値が高い作品です。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 国宝《一品経和歌懐紙》西行筆 京都国立博物館蔵
    国宝《一品経和歌懐紙》西行筆 京都国立博物館蔵


    こちらは、平安時代中期の歌人・和泉式部の家集《和泉式部統集》の写本の一部。本文は西行の筆跡とされていますが、真筆とは異なります。

    西行は恋歌に秀でた和泉式部の和歌を好み、その表現を盛んに歌に取り入れていました。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 重要文化財《和泉式部続集》伝 西行筆 国(文化庁保管)[会期中頁替有]
    重要文化財《和泉式部続集》伝 西行筆 国(文化庁保管)[会期中頁替有]


    こちらは、かつては渡辺家本と称されていた《西行物語絵巻》。全6巻から成り、絵は俵屋宗達と伝わります。

    絵巻の内容と画面構成は、本展でも展示されている毛利家本《西行物語絵巻》と同様で、宗達は同じ絵巻を二品つくったことになりますが、細部は異なる部分も多く、両者の関係はよくわかっていません。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 重要文化財《西行物語絵巻》絵 俵屋宗達筆 国〈文化庁保管〉[会期中巻替有]
    重要文化財《西行物語絵巻》絵 俵屋宗達筆 国〈文化庁保管〉[会期中巻替有]


    西行の和歌や逸話が広まるなかで、江戸時代には草双紙(絵を主体とし、その余白に地の文や台詞を配した小冊子)にも、西行が登場します。

    『西行物語』を改変した《西行法師一代記》には物語の進行に合わせて西行の和歌が取り上げられていますが、中には現代では西行が詠んだとはみなされていない歌も含みます。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 《西行法師一代記》大東急記念文庫蔵
    《西行法師一代記》大東急記念文庫蔵


    能の演目にもなった西行。こちらの画帖には、西行にちなむ演目「江口」と「西行桜」を含む能絵五十図が貼り込まれています。

    西行のイメージが広まるなかで、能の果たした役割の大きさが分かります。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より 《能絵鑑》国立能楽堂蔵[会期中巻替有]
    《能絵鑑》国立能楽堂蔵[会期中巻替有]


    工芸品もご紹介しましょう。蒔絵の技法は江戸時代に入ると洗練され、多彩な演出が見られるようになります。

    《桜西行蒔絵硯箱》は、蓋を裏返して身の右側に置くと意匠が連続し、琵琶湖の東岸より比叡山を望む景観になるもの。西行は比叡山の無動寺大乗院から琵琶湖を眺めて和歌を詠んでいます。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より (右手前)《桜西行蒔絵硯箱》東京国立博物館蔵
    (右手前)《桜西行蒔絵硯箱》東京国立博物館蔵


    大きな日本画は、近代日本画の礎を築いた明治時代の日本画家、橋本雅邦による作品です。西行の和歌「心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ」を題材に、紅葉と水辺の光景、飛び立つ鴨などを、西洋画の表現も取り入れて描いています。


    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」会場より (左手前)《西行法師図》橋本雅邦筆 東京大学 駒場博物館蔵
    (左手前から)《西行法師図》橋本雅邦筆 東京大学 駒場博物館蔵


    西行の名は広く知られていますが、23歳で突然出家した理由や、亡くなった場所なども定かではなく、その実像は謎に包まれています。

    展覧会は会期中に展示替えが何回かあります。詳しくは公式サイトの出品リストをご確認ください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年10月21日 ]

    五島美術館「西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み」展示風景
    《曾丹集切(巻子本)》伝 西行筆 九州国立博物館蔵
    《月輪切》伝 西行筆 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵
    《西行物語絵巻》慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)蔵[会期中巻替有]
    (左手前2幅)《西行物語絵巻断簡》絵 俵屋宗達筆 詞 烏丸光廣筆 MOA美術館蔵 / (奥)《西行物語絵巻断簡》絵 俵屋宗達筆 詞 烏丸光廣筆 一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫蔵[展示期間:10/22~11/13]
    (左から)《軍法白金猫》大東急記念文庫蔵[会期中頁替有] / 《人間万事西行猫》大東急記念文庫蔵
    《黄瀬戸茶碗 銘 柳かげ》五島美術館蔵
    《西行と遊女図》奥村政信筆 東京国立博物館蔵
    会場
    五島美術館
    会期
    2022年10月22日(土)〜12月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時―午後5時(入館受付は午後4時30分まで)
    休館日
    毎月曜日
    住所
    〒158-8510 東京都世田谷区上野毛3-9-25
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.gotoh-museum.or.jp
    料金
    一般1300円/高・大学生1000円/中学生以下無料
    展覧会詳細 西行 ― 語り継がれる漂泊の歌詠み 詳細情報
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