2013年10月、箱根・小涌谷にオープンした
岡田美術館。作品が際立つドラマチックな展示室、私設美術館としては日本最長クラスの展示ケース、重要文化財を含む質の高いコレクションと、豪華なミュージアムはすっかり箱根の新名所になりました。
岡田美術館の大看板のひとつが、喜多川歌麿《深川の雪》。所在不明になっていた作品が久しぶりにお目見えし、昨年は話題になりましたが、今回、1年ぶりに再公開される事となりました。
紹介されているのは、2階の展示室。198.8cm×341.1cmという大きさで、広い室内でも相当存在感があります。
画面中央にはS字に人物を配置。美人表現の素晴らしさは言うまでもありませんが、囲炉裏やネコなどの小物も上手く用いて、画面全体に精気がみなぎっているのが特徴的です。手の表情など、細かなところも生き生きと描かれています。
喜多川歌麿《深川の雪》《深川の雪》にあわせるように、他の展示室でも江戸時代の美人画が紹介されています。
江戸時代の美人画の多くは、遊女や芸者を描いたもの。円山応挙、葛飾北斎、そして喜多川歌麿ら、東西の肉筆浮世絵が並びます。
ちなみに、喜多川歌麿《芸妓図》に描かれている、右手で着物の前をつまみ左手を袖に隠して立つ芸妓の姿は、《深川の雪》の中央の女性とほぼ同じポーズです。
江戸時代の美人画江戸期だけでなく、近代の美人画も紹介されています。
「西の松園、東の清方」と並び称された美人画の名手、上村松園と鏑木清方を向かい合わせで紹介。清方の隣には弟子の伊東深水で、深水の《三千歳》と《早春》は近ごろ
岡田美術館の所蔵になりました。
近代の美人画あまり知られていないようにも思いますが、
岡田美術館には春画のコーナーもあります。
性の楽しみや喜びを絵画化した春画は、ポルノグラフィではなく「大人の遊び絵」ともいえる絵画。海外でも'Shunga'と呼ばれ高い評価を受けていますが、日本で常時見られるところは多くありません。
岡田美術館では、少し奥まった展示室で紹介。現在は、格調高い画風で狩野派による作と思われる《春画絵巻》、12カ月の季節の中に男女の交わりを描いた渓斎英泉《十二ヶ月風俗画帖》、そして春画史上に残る最高傑作のひとつともいわれる葛飾北斎《浪千鳥》を展示しています。ウェブで詳細はご紹介できませんので、ぜひ美術館でご覧ください。
春画のコーナーなお、
岡田美術館では、このたび所要する尾形乾山の《色絵竜田川文透彫反鉢》(旧名称・色絵紅葉文透彫反鉢)が重要文化財に指定されました。これで同館の重要文化財は計4点。5月19日(火)から全4件が同時公開されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月16日 ]