「浮世絵」と「食」をテーマにした本展。本来は4月17日に開幕する予定でしたが、新型コロナの影響で開幕が遅れていました。
浮世絵そのものの魅力を伝えるだけではなく、描かれた食のシーンを追いながら、当時の料理を再現し、そのレシピも解説していきます。
会場は4章構成で、第1章は「季節の楽しみと食」。春夏秋冬と、季節の移ろいとともに楽しまれた食の姿を紹介します。
春は梅を愛でながらの花見弁当や、雛祭りの草餅など。夏は端午の節句は柏餅。七夕や盂蘭盆は、陰暦の江戸時代には秋の行事。冬の焼き芋、そして正月の餅つきは、現在も変わりありません。
ここには歌舞伎の浮世絵も。芝居小屋の風景から役者の姿まで、歌舞伎は数多く浮世絵に描かれており、なかには宴席の料理なども添えられました。

第1章「季節の楽しみと食」

第1章「季節の楽しみと食」
第2章は「にぎわう江戸の食卓」。すし、鰻、天ぷらなどの料理、魚河岸、屋台など食の風景、そして貝、海苔、醤油など食材を描いた浮世絵です。最も多くの作品がこの章に並びます。
すしは古来から日本各地で作られたましたが、握りずしは文政年間(1818〜30)に登場。江戸湾で揚がった魚介を、酢でしめたり、醤油につけたりして、すしねたに。屋台から広まっていきました。
蕎麦も屋台から普及、立ったまま食べられる「かけ」が定番です。達磨が蕎麦を食べる絵は、達磨は釈迦から数えて28代目にあたるため、ニハ蕎麦(にはちそば)とかけています。
現在でも和食のベースといえる醤油。以前は主に関西で作られ高価な調味料でしたが、江戸時代に銚子や野田で濃口醤油が作られるようになり、鰻、そば、天ぷらなど外食に欠かせない存在になりました。会場には醤油のランキングを番付にしたものも展示されています。

第2章「にぎわう江戸の食卓」

第2章「にぎわう江戸の食卓」 二八蕎麦の屋台

第2章「にぎわう江戸の食卓」

第2章「にぎわう江戸の食卓」
第3章は「江戸の名店」。ここで紹介されている《東都高名會席盡》は、三代歌川豊国(国貞)による50枚揃いの作品です。芝居の登場人物に扮した役者に、コマ絵の部分には歌川広重が江戸の名店を描いています。

第3章「江戸の名店」 入口

第3章「江戸の名店」
第4章は「旅と名物」。参勤交代にともない街道が整備された事で、庶民も旅へ。十返舎一九『東海道中膝栗毛』も、旅ブームを後押ししました。
東海道を題材にした浮世絵も数多く生まれ、各宿には名勝のほか、美味しい食べ物も描かれました。府中の安倍川餅、桑名の蛤、水口のかんぴょうと、その地ならでは名物は、旅の楽しみにもなりました。

第4章「旅と名物」

第4章「旅と名物」

第4章「旅と名物」
会場隣接の「Cafe THE SUN」では、江戸庶民の料理から着想した4種の御膳を用意。東海道の旅路をたどる「利き酒セット」も気になるところです。

「おいしい浮世絵展 御膳」
観覧には専用オンラインサイトで「日時指定入館券」の購入、予約が必要です。ご注意ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年7月14日 ]