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鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵 ― 朝日智雄コレクション

美しき‘木版口絵’の世界

昨年、幻の作品が公開され話題になった鏑木清方。日本画の美人画で知られますが、木版口絵(もくはんくちえ)で清方と並ぶ人気を誇っていたのが鰭崎英朋でした。両名を中心に、明治〜大正期に同じ分野で活躍した絵師を紹介する展覧会が、太田記念美術館で開催中です。

  • 鰭崎英朋 柳川春葉・著『誓 前編』口絵 大正4年(1915)
  • (左から)鰭崎英朋 柳川春菜・著『いささ川』口絵 明治38年(1905) / 鰭崎英朋 泉鏡花・著『続風流線』口絵 明治38年(1905)
  • 鰭崎英朋 泉斜汀・著『深川染 前編』口絵 明治40年(1907)
  • 鏑木清方 菊池幽芳・著『百合子 後編』口絵 大正2年(1913) ©︎ AKIO NEMOTO
  • (左から)鏑木清方 「爪紅」(『文芸倶楽部』第20巻第4号口絵) 大正3年(1914) / 鏑木清方 大江素天・著『忘れがたみ』口絵 大正3年(1914) ©︎ AKIO NEMOTO
  • 水野年方 川上眉山・著『大村少尉』口絵 明治29年(1896)
  • (左から)武内桂舟 「看護婦」(『文芸倶楽部』第10巻第6号口絵) 明治37年(1904) / 武内桂舟 「ちらちら」(『文芸倶楽部』第17巻第3号口絵) 明治44年(1911)
  • 富岡永洗 尾崎紅葉・著『冷熱』口絵 明治29年(1896)
  • 梶田半古 「菊のかをり」(『文芸倶楽部』第11巻第13号口絵) 明治38年(1905)

※新型コロナウイルス感染防止のため2月29日(土)で終了

朝日智雄氏が蒐集した木版口絵の優品を紹介する本展。展覧会の前に、木版口絵の説明からはじめましょう。

木版口絵は、小説の単行本や文芸雑誌の巻頭に折込まれて入っていた、一枚擦りの版画です。A4程度の大きさで、明治20年代半ばから大正初期に流行しました。

内容は基本的には小説の一場面。当時は、封建的な家庭の中での恋愛を描いた「家庭小説」が主流だったため、木版口絵も多くは美人画でした。書籍の売り上げを左右するほど人気があったため、出版社はこぞって、実力のある絵師に口絵を依頼しました。

木版口絵は多色刷りの木版画なので、技法はそれまでの浮世絵と同じ。むしろ彫りや摺りの技術が進歩しているため、江戸時代の浮世絵より高い品質の作品は少なくありません。ただ、これまでの浮世絵研究では、ほとんど俎上にあがりませんでした。

今回は、東京では初めてといえる木版口絵の展覧会です。明治30年代後半から大正5年頃にかけて人気を二分していた鏑木清方と鰭崎英朋を軸に、それ以前に木版口絵で活躍していた水野年方、武内桂舟、富岡永洗、梶田半古の作品を紹介していきます。



まずは鏑木清方。後年は日本画で美人画の巨匠として確固たる地位を築きましたが、活動の初期は挿絵画家でした。清楚な美人の表現は、後の日本画にも通じます。

すっきりとした清方の美人に対し、鰭崎英朋が描く美人は、とても妖艶です。特に目元の表現が特徴的で、現代の感覚なら英朋の方が美人と言えるかもしれません。両者はともに月岡芳年の孫弟子、美術団体「烏合会」に属していた友人でもありました。

ただ、清方が日本画家として評価を得たのに対して、英朋は挿絵画家としての仕事を続けました。技量の差ではなく舞台の違いによって、現在の知名度の差がついたといえるでしょう。

両者は木版口絵では第二世代にあたる絵師。次の4名が第一世代で、この時期が木版口絵の黄金時代でした。

水野年方は清方の師。2016年にも太田記念美術館で展覧会が行われました。月岡芳年に入門し、後継者と目されたほどの実力者で、早い時期から木版口絵でも活躍しましたが、数え43歳で早世してしまいました。

武内桂舟は、ミスター木版口絵といえる存在です。博文館の文芸誌『文芸倶楽部』では、最多の64点を桂舟が描いています。もとは陶器の絵付け職人でしたが、尾崎紅葉に目をかけられて挿絵画家に転身しました。

富岡永洗は「明治の歌麿」と言われた美人画の名手です。小林永濯に学び、挿絵や口絵で活躍しました。ただ、年方と同様に早世で、数え42歳で亡くなっています。

梶田半古は、前述の三人よりは少しだけ若く、明治生まれ。浮世絵師や南画家に入門するとともに、独学で菊池容斎『前賢故実』を学習しました。斬新なデザイン感覚で、挿絵や口絵に新風を吹き込みました。

展覧会は弥生美術館「もうひとつの歌川派?! 」展との連携企画。半券提示で割引になります。両展あわせてお楽しみください。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年2月19日 ]


 

ミュージアムの詳細

展覧会の詳細

会期

2020年2月15日(土)~3月22日(日)