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    北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その1)

    長野県大町市を舞台にした北アルプス国際芸術祭。2017年に第1回が開催され、コロナ禍で延期となっていた第2回がようやく開幕。10月2日からはじまったアート展を見に行ってきました。

    大町に到着したら、まずはセントラルショップか市内4カ所のインフォメーションへ。受付を済ませた後に、各所を回ります。



    セントラルショップでは、北アルプス国際芸術祭のビジュアル・ディレクター皆川明及びミナ ペルホネンのデザインによるオフィシャルグッズも販売中です。


    作品の番号は37番までありますが、うち3点はコロナ禍のため残念ながら出展中止。ここでは鑑賞した作品の中から、目についたものをご紹介します。

    まずは《アルプスの玻璃の箱舟》。雪解けの春にだけ青木湖で取れる水晶を用いて、北アルプス山脈のかたちにした作品です。絶好の好天に恵まれた事もあり、白い作品が青木湖に映えます。



    杉原信幸《アルプスの玻璃の箱舟》


    杉原信幸《アルプスの玻璃の箱舟》


    続いてフィンランドのマーリア・ヴィルッカラによる《何が起こって 何が起こるか》。湖に浮かぶ舟、鐘の音、塩などからなるインスタレーションです。

    作品がある中網湖は、地震で湖中に沈んだ寺の鐘の音が今でも聞こえるという伝説が伝わります。作品は、この伝説と中綱湖の自然や歴史から着想してつくられました。



    マーリア・ヴィルッカラ《何が起こって 何が起こるか》


    《水を遊ぶ「光の劇場」》も、湖とシンクロした作品。木崎湖に面した空家の2階に進むと、真っ暗な部屋から見事な湖が鑑賞できます。木崎湖そのものが作品といえるかもしれません。

    1階はコミュニティスペースになっており、スワンボートのデザインを考える事ができます。



    木村崇人《水を遊ぶ「光の劇場」》


    こちらは一転、とてもユニークな作品。隣り合う家のうち、1軒の家の一部が切り取られ、隣の家にめり込んでいます。

    この地がフォッサマグナの西の縁に位置する事からの発想とありましたが、理屈抜きの面白さ。家は旧教員住宅で、教頭先生の家が校長先生の家に突っ込んでいます。作家が女性というのも、ちょっとびっくりしました。



    持田敦子《衝突(あるいは裂け目)》


    持田敦子《衝突(あるいは裂け目)》


    こちらはクリエイティブチーム「目 Mè」による作品。舞台は鷹狩山の山頂の空き家で、内外とも有機的な白いフォルムに包まれています。

    鑑賞者は2階に行ったり、梁をまたいだりしながら白い空間を進行。上下左右が分からなくなるような不思議な感覚のまま進むと、突然、北アルプスと大町市街が見渡せるゴールに到達します。

    さすがは、いつも私たちを驚かせてくれる「目 Mè」ならではのクオリティ。2017年の第1回展で発表され、恒久展示されています。



    目 Mè《信濃大町実景舎》


    目 Mè《信濃大町実景舎》


    目 Mè《信濃大町実景舎》


    続いて、田んぼの中に設けられたランドアート。遠目だと何かを育てているように見えますが、植えられているのはグラデーションに着色された50万本の竹ひごです。

    制作には地域住民も協力し、一本一本、田植えのように設置されました。作品の印象だけでなく、制作プロセスにも農業の心が宿っています。

    作者は台湾のヨウ・ウェンフー。作品名にある「心田」は、中国語で「心の在りよう」を示す言葉です。



    ヨウ・ウェンフー(游文富)《心田を耕す》


    ヨウ・ウェンフー(游文富)《心田を耕す》


    こちらは、150m×300mという超巨大な作品。七倉ダムの周辺環境とその変化をテーマにした表現です。

    作品がある七倉ダムは、日本有数のロックフィルダム(岩石や土砂を積み上げて建設したダム)。ダムの石積みに負けない作品のダイナミズムが印象的です。

    作者の磯辺行久は1970年代から環境計画のパイオニアとして活動。近年は自然環境の変化や地域社会の関係を主題にした作品を発表しています。



    磯辺行久《不確かな風向》


    磯辺行久《不確かな風向》


    こちらは、特に人気が高い作品のひとつ。天照大御神が祀られた須沼神明社の舞台で展開されるインスタレーションです。

    天照大御神の神話で語られる稲わらのしめ縄を、神社をとりかこむ木々に見立てて、舞台上に設置。観客は舞台まで上って鑑賞する事が可能です。

    毎週金・土・日曜日は17時~19時に夜間公開。日が暮れるのを待って、多くの方が鑑賞に訪れていました。



    マナル・アルドワイヤン《私を照らす》


    マナル・アルドワイヤン《私を照らす》


    マナル・アルドワイヤン《私を照らす》


    鑑賞行程をご紹介すると、金曜の夜に移動して松本で宿泊。土曜は朝からレンタカーで大町へ、初日に全体の3分の2ぐらいを鑑賞して、大町に宿泊。翌日に残りを見て、松本経由で帰京しました。

    ちなみに、大町での宿泊は「信濃おおまち☆宿泊キャンペーン」を利用しました。最大4,000円分の宿泊補助が利用できます。

    レポートは2回に分けてご紹介します。紹介できなかった作品も含めて、動画もご紹介します。



    [ 取材・撮影・文:M.F. / 2021年10月30日~31日 ]


     → 北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その1)

     → 北アルプス国際芸術祭 2020-2021(レポート その2)


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    会期
    2021年10月2日(土)〜11月21日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00 
    ※一部鑑賞時間の異なる作品あり。
    電話 0261-85-0133
    公式サイト https://shinano-omachi.jp/
    料金
    一般 3,000円(2,000円)
    16~18歳 1,500円(1,000円)
    15歳以下 無料(無料)
    ※()内は前売り料金
    ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかの提示で、ご本人様のみ、一般1,000円、16〜18歳500円(当日、前売一律。15歳以下無料)で販売。この際の販売は北アルプス国際芸術祭運営本部(セントラルショップ)のみ。
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