2019年に渋谷駅東口にできた渋谷スクランブルスクエアの展望施設「SHIBUYA SKY」。46階「SKY GALLERY」では、“視点を拡げる”をテーマに企画展を定期的に開催しています。
地上から229mもの高さで都心が一望できるだけでこの空間で、現代アートチーム目 [mé]を紹介する企画展がはじまりました。

展示風景
目 [mé]の中心メンバーは、アーティストの荒神明香、ディレクター南川憲二、インストーラー増井宏文。不確かな現実の世界から、展示空間を通して私たちを異空間に引き寄せような作品を展開しています。
近年では、2019年に開催された千葉市美術館「目 [mé]非常にはっきりとわからない」が反響を呼んだほか、芸術祭での出展や今秋開催される「さいたま国際芸術祭2023」のディレクターに就任するなど、幅広く活躍しているアーティストです。
会場には、これまで制作してきた作品や、そのコンセプトからなる新たにつくられた映像作品が並びます。

展示風景
会場で最初に出会うのは、約2000個もの時計が吊るされたインスタレーション。モニターに目を移すと、鳥たちが飛び立つ映像が流れています。
今回の展覧会の特徴のひとつに、非言語による展示に挑戦したことがあげられます。会場内にはキャプションはありません。渋谷の中心で、言葉や意味を切り離した空間をどのように創り出すか、試行錯誤したとアーティストの荒神明香は話します。

展示風景
これまでの自分たちの展示からすると、かなり特殊な場所だったと語るのは南川憲二。「SHIBUYA SKY」は、いわゆる商業的な場所でもなく、作品と対峙できる美術館でもない。眺望を「ただ、眺める」特殊な空間で作品を融合させる必要がありました。
都市はそれぞれ、目的や意味によって成り立っていますが、そんな都市の運動や日常から“ふっと”離れられる。都市の意味に吸い込まれない、眺望に添えるような作品が今回の企画の醍醐味です。

展示風景
下に目線を下げると、展覧会特設サイトへつながるQRコードが記されたちり紙が床に置かれていたり、壁際の鏡越し貼られたQRコードなど、目 [mé]ならではの演出も各所に感じられます。

展示風景
また、常設されている窓際に並んだモニターでは、近づくと目の前に広がる東京の景色とモニターにうつる映像に自分自信がまるで溶け込んでいく様な体験もできます。

展示風景
「SKY GALLERY」に訪れた方が偶然、アート作品に出会うこともできるこの企画。昼間の展示だけでなく、夜景の中での空間ではまた違った姿を楽しむことができそうです。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年1月13日 ]