香川県立ミュージアムでは、特別展「語る武具 ARMOUR&STORIES」が開催されています。甲冑や刀剣などの武具を、「物語」という視点を取り入れてわかりやすく紹介している企画展です。
本展では、現代美術家の野口哲哉氏を企画協力に迎え、従来の武具展示とは一風異なった展示方法も取り入れられています。
香川県立ミュージアムは、香川県の県庁所在地高松市にあるミュージアムです。
美術分野と歴史分野を融合させたこのミュージアムの2階特別展示室で、10月24日から12月6日にかけて、武具をテーマとした特別展が開催されています。
甲冑や刀剣はすでに博物館や美術館でお馴染みかつ人気のあるテーマですが、本展は少し趣が異なっており、ポスターからすでに従来の武具展示とは一風変わった雰囲気があります。
本展のポスターは、甲冑の部品がバラした状態で配置されており、どこかポップな印象があります。
じつは、このポスターは企画に協力された現代美術家の野口哲哉氏のアイディアからはじまり制作されたものだそうです。 パーツを並べたプラモデルのパッケージをイメージされています。
本展では、野口哲哉氏の描かれたイラストや一口メモが随所に展示されています。会場に入ると、甲冑を着た武士たちと腕を大きく広げた謎の怪物が出迎えてくれます。

展示風景
「一 武具いろいろ」では、武具ときいて最初にイメージする甲冑や刀剣のみでなく、陣太鼓や采配などのいろいろな武具が展示されています。
ここでの見どころは、甲冑がパーツごとに分解されている点です。組み立てた状態のときでは見られない細部の構造や装飾を見ることができます。
また、甲冑の着用図を描いた野口哲哉氏のイラストも一所に展示されているので、各部品を身に着ける場所を理解することができます。

展示風景
「二 伝わる刀」では、讃岐国や松平家に伝わった刀が展示されています。
重要文化財の「太刀 銘 元重」や「太刀 銘 真守造」、香川県指定文化財の「刀 無銘 伝江義弘(号芦葉江)」をはじめとする刀剣を見ることができます。
「三 造るひとびと」では、武具を製作したひとびとを紹介します。
大坂の陣後の徳川の世で鉄砲鍛冶から刀鍛冶へと転身した野田清尭(小野繁慶)や対外的な緊張の高まった江戸後期に鉄砲の開発に取り組んだ久米栄左衛門などの制作物を中心に展示しています。 どの作り手の事情にも時代の要求が色濃く表れており、歴史を感じながら、美麗な製作物を見ることができます。
「四 祈りと武具」では、金刀比羅宮や田村神社などの香川県内の寺社に奉納された武具が展示されています。
普段はそれぞれの寺社で保管されている武具を一度に目にすることのできる有り難い機会です。
「五 人と武具と物語」では、人と武具にまつわる物語が紹介されています。
松平左近(賴該)が仕立て直させた甲冑や小夫兵庫に使われた刀剣に加え、自画像や文書資料なども一所に展示され、その背景を理解しやすいつくりになっています。
また、ここでは山田蔵人が使ったと伝わる大きな甲冑と、根来寺に伝来した牛鬼の絵画が展示されています。牛鬼とは根来寺近辺に出没したと伝わる伝説上の生物で、山田蔵人がこの牛鬼を退治したという伝説があります。
会場では、蔵人と牛鬼のバトルを想像して製作された映像も見ることができます。

展示風景

展示風景
「六 武士と武具と村」では、武家に伝わってきた武具と村に伝わってきた武具が紹介されています。
武具という視点を通すことで浮かび上がる江戸時代の社会の特質をていねいに解説しています。実質的な部分もしっかり解説されているのも、この特別展の魅力です。

展示風景
最後に、これまで各所に配されていた野口哲哉氏のイラスト原画を見ることができるコーナーも設けられています。
武具のみを見る感覚とはまた異なり、広がりのある展示空間でわくわくしながら見ることができました。どのようにつくられ、なぜそこにあるのか。普段は自明のことのようにキャプションに記されることの多い情報について、「物語」という視点を取り入れ、歴史的事実とともに噛み砕いた解説がなされていました。
武具に興味のある方も、あまり触れてこなかった方も楽しめる特別展です。一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:平の / 2020年10月24日 ]
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