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    レポート
    東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
    東京国立博物館 | 東京都
    創立からちょうど150年。東京国立博物館が所蔵する国宝89件すべてを公開
    第1部は前代未聞の「国宝だけの展示室」。第2部はトーハクの歩みを概観
    東京国立博物館にキリンの剥製があった?約100年ぶりに里帰り展示が実現

    明治5年(1872)、東京・湯島聖堂大成殿で博覧会が開催。今日に至る東京国立博物館の歴史は、ここからはじまりました。

    今年はちょうど150年となるメモリアルイヤーです。東京国立博物館が所蔵する国宝89件すべてと、明治から令和にいたる関連資料を通して、東京国立博物館の全貌を紹介する展覧会が始まりました。


    東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」会場入口
    東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」会場入口


    展覧会は2部構成で、第1部は「東京国立博物館の国宝」。現在、国宝に指定されている美術工芸品は全国に902件なので、東京国立博物館の89件は全体の約1割。日本最大の国宝コレクションです。

    この展覧会では絵画・書跡・東洋絵画・東洋書跡・法隆寺献納宝物・考古・漆工・刀剣にわけて、この国宝89件すべてを会期中に公開します。ここでは、うち数件だけご紹介しましょう。

    《秋冬山水図》は「画聖」として名高い雪舟(1420-1506?)の代表作。安定感のある構図や力強い筆致は、雪舟ならではといえます。


    国宝《秋冬山水図》雪舟等楊筆 室町時代 15~16世紀[展示期間:10/18~11/13]
    国宝《秋冬山水図》雪舟等楊筆 室町時代 15~16世紀[展示期間:10/18~11/13]


    《鷹見泉石像》は渡辺崋山(1793-1841)による肖像画の傑作です。

    古河藩士で蘭学者の鷹見泉石を、蘭学の弟子である崋山が描いたもので、精緻な筆づかいと微妙な陰影法による写実的な顔の描写と、おおらかな着衣の表現が対象的です。


    (左から)国宝《鷹見泉石像》渡辺崋山筆 江戸時代 天保8年(1837)[展示期間:10/18~11/13] / 国宝《納涼図屛風》久隅守景筆 江戸時代 17世紀[展示期間:10/18~11/13]
    (左から)国宝《鷹見泉石像》渡辺崋山筆 江戸時代 天保8年(1837)[展示期間:10/18~11/13] / 国宝《納涼図屛風》久隅守景筆 江戸時代 17世紀[展示期間:10/18~11/13]


    《埴輪 挂甲の武人》は、古墳時代の埴輪として初めて国宝に指定されたもの。令和2年(2020)までは、唯一の国宝埴輪でした。

    武器や武具が精巧に表現されたこの埴輪。蝶結びが10か所あり、甲が紐で結んで着装していたことが分かるなど、古墳時代後期の東国武人の武装を知ることができる貴重な資料でもあります。


    (左)国宝《埴輪 挂甲の武人》群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代 6世紀[展示期間:10/18~12/11]
    (左)国宝《埴輪 挂甲の武人》群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代 6世紀[展示期間:10/18~12/11]


    《竜首水瓶》は、法隆寺に伝わった水差し。ササン朝ペルシャ由来の、長い首と下にふくらむ胴に把手を取り付けた器形で、かつては銀製と考えられ「銀龍首胡瓶」として国宝に指定されていました。

    蝶番で把手に留めた龍の上顎が蓋になっており、角を押すと蓋が開き、片手で注げます。胴部には有翼の天馬(ペガサス)4頭が毛彫(細い線刻)で表現されています。


    国宝《竜首水瓶》飛鳥時代 7世紀[展示期間:10/18~12/11]
    国宝《竜首水瓶》飛鳥時代 7世紀[展示期間:10/18~12/11]


    《舟橋蒔絵硯箱》は琳派の祖・本阿弥光悦(1558-1637)を代表する有名な硯箱です。

    蓋は高く山形に盛り上げられ、箱の全面に金粉をまき、鉛の板で橋を表現。銀の板を切りぬいて文字が散らし書きにされており、箱の意匠から「舟端」を読み取らせる趣向です。


    国宝《舟橋蒔絵硯箱》本阿弥光悦作 江戸時代 17世紀[展示期間:10/18~11/13]
    国宝《舟橋蒔絵硯箱》本阿弥光悦作 江戸時代 17世紀[展示期間:10/18~11/13]


    第1部の最後は、刀剣がずらり。《太刀 銘 三条》(名物 三日月宗近)をはじめ、国宝の刀剣が19点並ぶ展示空間は、まさに圧巻です。刀剣は19点とも、全期間展示されます。


    国宝の刀剣が19点並ぶ展示室
    国宝の刀剣が19点並ぶ展示室


    第2部「東京国立博物館の150年」では博物館の歩みを3期に分け、東京国立博物館のこれまでと現在、そしてこれからを展望します。

    第1章は「博物館の誕生」。博覧会を機に誕生した東京国立博物館。博覧会を通して日本の近代化を図り、日本の文化力を国内外に発信する。さらに西欧化のあおりを受けて危機的状況にあった文化財を守ることを目的としていました。


    第1章「博物館の誕生」
    第1章「博物館の誕生」


    第2章は「皇室と博物館」。博物館は明治19年(1886)に宮内省所管となり、後に「帝国博物館」、さらに「東京帝室博物館」と改称されます。

    帝室博物館の時代には、関東大震災による本館の損壊と復興、戦争による文化財の疎開という大きな出来事もありましたが、収蔵品や調査研究の充実が図られ、現在に続く博物館活動の基礎が築かれました。

    帝室博物館時代には、キリンの剝製標本が天産(自然史)資料として展示されていました。現在は国立科学博物館に移管されており、本展では約100年ぶりの里帰り展示となります。


    第2章「皇室と博物館」 (手前)《キリン剝製標本》明治41年(1908)国立科学博物館蔵[全期間展示]
    第2章「皇室と博物館」 (手前)《キリン剝製標本》明治41年(1908)国立科学博物館蔵[全期間展示]


    第3章は「新たな博物館へ」。終戦後の昭和22年(1947)に国民の博物館となり、昭和27年(1952)には現在の東京国立博物館に改称。今日まで、組織の拡充と改編、施設の増改築を重ねつつ、文化財の収集保存、展示公開、調査研究に取り組んでいます。

    また、最新技術の導入、新たな研究領域の開発、文化財活用の充実など、社会や時代の変化に応じ、これまでとは異なる博物館活動にも挑戦しています。


    第3章「新たな博物館へ」 重要文化財 《風神雷神図屛風》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀[展示期間:10/18~11/13]
    第3章「新たな博物館へ」 重要文化財 《風神雷神図屛風》尾形光琳筆 江戸時代 18世紀[展示期間:10/18~11/13]


    多くの国宝が展示される事を強く押し出している展覧会はしばしばありますが、これほどの規模は空前絶後。特に、第1部の「国宝しか展示されていない」というのは、聞いた事がありません。

    ただ、何度も展示替えがあるのも事実。ここで紹介した展示物も、多くは会期の途中でなくなってしまいます。公式サイトには出品目録が出ていますので、観覧の参考にしてください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫、坂入美彩子 / 2022年10月17日 ]

    第1部「東京国立博物館の国宝」 絵画の展示
    (手前)重要文化財《褐釉蟹貼付台付鉢》初代宮川香山作 明治14年(1881)[全期間展示]
    《金剛力士立像》平安時代 12世紀[全期間展示]
    《見返り美人図》菱川師宣筆 江戸時代 17世紀[展示期間:10/18~11/13]
    会場
    東京国立博物館
    会期
    2022年10月18日(火)〜12月11日(日)
    もうすぐ終了[あと13日]
    開館時間
    午前9時30分~午後5時
    ※金曜・土曜日は午後8時まで開館(総合文化展は午後5時閉館)
    休館日
    月曜日
    住所
    〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.tnm.jp/150th/
    料金
    一般 2,000円
    大学生 1,200円
    高校生 900円

    ※本展は事前予約制(日時指定)です。
    展覧会詳細 東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」 詳細情報
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